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【彩の国 まつりごと】

【第十部】次への一歩<4> 瀬戸際の志木市民病院

2011年10月29日

赤字と医師不足で苦況に陥っている志木市立市民病院

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 「小児・小児外科入院診療の看板を下ろし、高齢者向けの訪問看護や在宅診療の充実などに比重を移そうと考えている」

 赤字が常態化している志木市立市民病院。市の財務担当者は、こう明かした。「このままでは立ちゆかないからです」。病院運営は岐路に立つ。

 市は昨年度、一般会計から五億四千万円もの補助金を病院会計に投入、表面上の黒字を八年ぶりに確保した。本年度も二億九千万円の補助金を拠出する方針。推計では来年度以降も毎年一億五千万〜二億円程度の穴埋めがないと、やっていけないという。

 医師不足も運営の足を引っ張る。昨年度は二人いた常勤の整形外科医が辞めたため、利益率の高い整形外科の入院診療ができなくなり一億五千万円の減収に。四十五床の専用ベッドを持って二十四時間救急を受け入れ、市民病院の看板医療である小児科も、常勤医は施設管理者を含め五十九〜六十四歳の三人だけ。週二回の当直もこなすハードな勤務で、市幹部は「このままでは医療事故が起きるのでは」と漏らした。

 長沼明市長は今月から、周辺自治体の首長を回って頭を下げ、異例の財政支援要請を始めた。小児患者の大半が朝霞、新座、富士見、ふじみ野各市や三芳町などの周辺自治体で占められ、「志木市民の税金をよその人のために使うのはおかしい」という市民の声もあるからだ。

 だが、どの自治体も財政難で色よい返事はない。市長は大学病院なども巡って小児科医の勧誘もしているが、見通しは不透明だ。小児科医の施設管理者は年度末で任期切れ。新たな医師が確保できなければ現状維持は困難で、看板医療も瀬戸際にある。

 少子高齢化、長引く不況による経済収縮、国と地方の財政悪化−。限られた税収でどう行政サービスをするのか、大きな課題だ。神奈川県秦野市は昨年八月に出した「新行財政改革プラン」で、「これまでのように行政サービスを拡大しながら提供し続けることは困難」と宣言。千葉県習志野市も一昨年三月の「公共施設マネジメント白書」で、「老朽化した公共施設を全て更新するのはコストがかかりすぎる」と、市民に選択と集中の議論に参加するよう呼び掛けた。

 各自治体がサービス拡大を競い合うように広まった子ども医療費無料化。首長選挙で公約に掲げられることも多く、県によると全六十三市町村で実施され、見直しを考えている自治体はない。だが、東京都世田谷区は、所得制限導入など見直しを検討し始めた。

 長沼市長は市民病院の小児医療について、周辺自治体の財政支援や医師確保ができなければ、来春から入院受け入れを中止し、外来だけにする方針だ。小児医療の拠点が消えるというシナリオに、県は「ちょっと待ってもらえないか」と、焦りの色を濃くしている。 (上田融)

<子ども医療費無料化> 県のまとめでは、滑川町は入院・通院とも高校生まで無料化。中学生までの無料化は入院が57、通院が42自治体。小学生までは入院が5、通院が8自治体。未就学児までは県が2分の1を負担しているが、それ以降の分は市町村の独自助成となる。自治体にとっては子育て世代の居住・税収増を期待できるが、財政負担も大きい。

 

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