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【スカイツリー成長記】

高い安全 内から支え きょう200メートル超える

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 完成時の高さが当初予定から24メートル伸びて634メートルとなった東京スカイツリー(墨田区押上)。10日に200メートルを超える。

 塔本体は一見真っ白だが、実はわずかに青が混じる。藍(あい)染めの伝統色「藍白」をアレンジ。つやを控えて渋めに仕上げた。さび止めなどを7層に塗った上に、フッ素樹脂塗料を重ねる。同じ塗料を使う本州四国連絡橋の3倍近い55ミクロンの厚さに塗り、国内最高水準の耐久力。大林組技術研究所の堀長生(ながお)専門主事(58)は「つめで引っかいたぐらいじゃはがれません」。

 重力、風力、地震、温度…。建築はあらゆる“力”との闘いだ。世界一の高みを目指すには、強固なつくりが欠かせない。その重要な設計を担うのが日建設計構造設計部門技師長・慶伊道夫さん(61)率いる構造設計チーム。イメージをふくらませ、外観を描く意匠設計とは対照的に、こつこつとデータを積み上げる。感性よりも経験がものをいう。「デザイナーではなくエンジニア」。言葉の端に誇りがにじむ。

 柱の材料に何を使うか。どう接合するか。壁はどこに配置するか。数学とコンピューターを駆使し、青写真を現実的な図面に仕上げる。「今は目の前のハードルを一つ一つこなしていくだけ」と淡々と語る一方で、「条件が整えば千メートルの建築も不可能じゃない」と自信をのぞかせる。

ツリーの後方に富士山がくっきり。塔の白色は、青が混じった「スカイツリーホワイト」=本社ヘリ「わかづる」から

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 進路を考えあぐねた高校時代「文系と理系の中間だから」と建築を志した。京大大学院を修了し一九七三年に入社。「答えが明確に出ない意匠は向いていない」と、構造設計の道を選んだ。

 四年前に発覚した耐震強度偽装事件は、構造設計者の立場が弱かったことを浮き彫りにした。「構造の人間は夜跳び起きて、『鉄筋をもう一本増やそう』と思うくらい安全にこだわるもの。全く逆のことをした建築士に、置かれた環境のいびつさを感じる」と、じくじたる思いを語る。

 ツリーの設計では、未知の領域に挑むため、気球を飛ばして上空の風を調べ、地下三キロの地層から地震発生時の揺れ方を探った。ツリーの耐用年数は百年。今回の仕事が真に評価されるのは、次の世紀かもしれない。

 直接手掛けた建物だけで二百を超え「ツリーは決して特別じゃない」という。それでも「手のかかる子ほどかわいいのでは」と問うと、「もちろん」との答えが返ってきた。

 文・岡村淳司/写真・笠原和則、藤原進一、潟沼義樹

 

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