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【スカイツリー成長記】

速くたくさん運びます

東芝エレベータの藤井知秀さん

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 「速さと大容量の両立。それがスカイツリー仕様のエレベーターの特徴です。通常、どちらかを高めれば一方は抑えるので、これは大変だと思いました」。八月から東京スカイツリーの塔体内部で進むエレベーター工事。製造を担当する企業の一つ、東芝エレベータのプロジェクトリーダー藤井知秀さん(51)は話す。

 いかに速く、たくさんの客を展望台に運ぶか、スカイツリー経営の生命線につながる課題だ。同社が製造する第一展望台(高さ三百五十メートル)までの一般客用全四基は、分速六百メートルの四十人乗り。地上から五十秒ほどで到着する。

 同社は、東京・六本木の「泉ガーデンタワー」に七十五人乗りという超大型を設置した。これは分速二百四十メートル。台湾の超高層ビル「台北101」にある世界最高速度、分速千十メートルのエレベーターも同社製で、こちらは二十四人乗りだ。

 速さと大きさを同時に実現するための仕組みは、一つ一つスケールが大きい。

 大容量のかごをつるワイヤの材質は、通常より強度を一・五倍に高めた。昇降距離が長い分、大量のワイヤが必要で、かごを合わせた一基全体の重さは二十トンを超える。それらを引っ張る巻き上げ機の力は、通常のマンションで使われる機械の約二十倍、高層ビルと比べても約二倍だ。

上空から見た東京スカイツリー。中央の空洞の周囲にエレベーターが設置される=墨田区で、本社ヘリ「おおづる」から

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 「でも、本当に大変なのは、これから本格化する設置工事です」。そこでは太陽の光すら“敵”になる。

 「レール」と呼ばれるエレベーターの通り道は、一本五メートルの部材を何度も上に継ぎ足し、展望台まで積み上げていく。特にレールの位置決めとなる最初の一本の取り付けには細心の注意を要する。この工事は夜間に行われる。「日中だと、ほかの工事の振動があるうえ、太陽光の影響で金属がわずかに伸縮してしまい、必要な精度が得られない」

 その後のレール設置も、つなぎ目に許される誤差は〇・一ミリ以内。高度な精密作業が続く。「将来への遺産となるようなものづくりに携わることができ、名誉と同時に、大きな責任も感じます。期待に応えられる製品を納めたい」。国内最長のエレベーター造りに気を引き締める。

<工事メモ>ドア開くまでのお楽しみ

 地上4階から第1展望台に向かう高速エレベーターは、外の景色が見えない。

 事業主の東武タワースカイツリーによると、距離が長く速度も速いので、窓があると目前をタワーの鉄骨が猛スピードで次々と通り過ぎていく。「景色が目まぐるしく変わって、酔ってしまう可能性がある」

 その代わりに同社は、こんな演出効果を狙っているという。外が見えないかごの中で期待しながら上昇し、展望台3階のメーン展望室に到着。ドアが開くと、すぐ目の前に高さ350メートルの眺望が現れる−。エレベーター到着ロビーには、来場者の歓声がこだまするかもしれない。

 文・小野沢健太/写真・笠原和則、小平哲章

 

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