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【スカイツリー成長記】

上向くタワークレーン 安全対策ひと工夫

東京スカイツリー建設に使われているタワークレーンについて話をする椎名肖一さん=東京都港区港南で

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 東京スカイツリーと一緒に、ぐんぐん成長を続けているのが、二台のタワークレーンの支柱。その姿は、第一展望台の屋根から、塔体と合わせて三本の塔がそびえているようだ。

 五百メートル近い高所で数トンの資材を運ぶクレーンには、安全対策のアイデアが満載。開発を担当した大林組の椎名肖一さん(54)は「経験したことのない高さで、現場の人が安心して作業に臨めるよう工夫を凝らしました」と話す。

 スカイツリーのタワークレーンは、従来のクレーンでは見られない姿勢を取ることがある。強風で作業をしないとき、操縦室から前方に突き出た「ジブ」と呼ばれる可動部分が、二台ともほぼ真上を向いているのだ。

 通常のビル工事現場で屋上に設置されたクレーンは強風のとき、ジブを水平近くまで伏せている。こうすると風の力を受けやすいので、風に逆らわず風見鶏のように、ぐるっと風下へ向く。こうしておけば、強風で負荷がかかってクレーンが壊れる心配がない。

 しかし現在、スカイツリーのクレーンは、屋上でなく第一展望台の上。すぐ横には塔体がある。伏せた状態で回ると、塔体に衝突する恐れがある。

1日の作業を終え、ジブを上にしたクレーン。風下を向いている=9月7日、江戸川区で

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 だからスカイツリーのクレーンは、ジブが上を向いている。それでも強風の日はちゃんと風下に回転している。なぜか。クレーンに風向計があるからだ。常に風向きを計測しながら、モーターで風下の方向に旋回させている。

 ほかにも、作業中の突風対策として、ジブの角度に応じて逆方向に力を加えてワイヤで引っ張り、安定した姿勢を保つ装置など、独自の技術を開発した。「新しいことに挑戦できる楽しさがあり、安全対策のアイデアは次から次へと出てきた」と振り返る。

 クレーンは震度5強の揺れに耐え、風速五五メートルの暴風でも壊れないよう設計されている。工事終盤には約百二十メートルまで伸びるクレーンの支柱も通常より強度を25%高めた。万全の策を講じたが「できるなら大きな台風や地震が起きないまま工事が終わってほしい」。心配が尽きない“親心”に、世界一を造る重圧が垣間見えた。

<工事メモ>幅40センチの通勤路

 塔体と並ぶようにして伸びているクレーン2台の支柱には、20メートルほどの間隔で水平の支えが設けられ、塔体とつなげて安定性を高めている。

 幅40センチ、長さ13メートルの支えは、クレーン操縦士の通り道でもある。作業開始時、塔体から支えの上を渡って、支柱の中にあるはしごを上って操縦室に到着する。

 「渡るときには必ず命綱をつけ、ゆっくりと進んでいきます」と大林組の広報担当者。高さ400メートル以上にある狭い“通勤路”。作業中はもちろん、行き帰りにも勇気を求められるようだ。

 文・小野沢健太/写真・笠原和則、藤原進一

 

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