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【スカイツリー成長記】

極めれば日本古来の技 動く「心柱」 揺れ抑える

構造設計を担当した慶伊道夫さん=千代田区の日建設計で

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 「現代の知識で合理的に追究した結果、伝統建築と同じ形になりました」。東京スカイツリーの構造設計を担当する日建設計の慶伊道夫さん(62)は、塔の地震対策について、そう話す。追究で生まれたのが、制振装置として塔の中心に設ける「心柱(しんばしら)」だ。

 同社によると、心柱がある三重塔や五重塔は歴史上、地震で倒壊した記録がほとんどない。ただ、耐震のために置かれたわけではなく、地震に強い理由も明確ではない。

 スカイツリーの心柱は、鉄筋コンクリート製で、直径八メートル、高さが三百七十五メートル。根元から第一展望台の屋根上まで、塔の中心を貫いている、巨大な一本の円筒だ。重さは一万一千トンもある。地震の際、周囲の鉄骨部分とは別に揺れる。互いの動きを打ち消し合うことで、塔全体の揺れは小さくなる。

 通常の高層ビルでは、建物の頂上に制震のための重りが置かれる。高さ六百三十四メートルのスカイツリーに見合う巨大な重りを、塔の狭い頂上に置くのは、物理的に不可能。置ける場所が、塔中心にある非常階段の周囲だった。

 柱は高さ百二十五メートルまでを塔に固定し、それより上は塔との接続部分に若干の「遊び」を設け、柱が動くようにしてある。柱の厚さも百メートルまでは四十センチ、それより上が六十センチと変え、最も効果的に揺れを抑えられるよう設計した。塔全体の揺れを、最大で四割減らせる。「関東大震災や阪神淡路大震災級の地震でも、ほぼ無傷で済みます」

 ツリーの制振装置は、期せずして日本古来の塔と同じ構造になり、先達の技へ敬意を表して「心柱制振」と名付けられた。「日本人のものづくりのDNAが、同じ形にしたのかもしれませんね」。最先端と伝統の出合いに、感慨ひとしおだ。

浅草寺五重塔(左奥)をバックに建設が進む東京スカイツリー=4日、墨田区で、本社ヘリ「おおづる」から(笠原和則撮影)

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<工事メモ>煙突のように中ですくすく

 心柱の工事は昨年11月上旬に始まり、現在は高さ約150メートル地点まで完成している。「造り方は基本的に煙突と同じです」と施工者の大林組。型枠にコンクリートを流し込んで固め、1日に2.5〜3メートルずつ、円筒形を上に伸ばしていく。

 今春、塔体が完成時の高さ634メートルに達した後も、内部では心柱の成長が続く。375メートルに到達するのは、夏前ごろ。心柱内部には日本一長い非常階段が設置される。

 文・小野沢健太/写真・笠原和則、潟沼義樹

 

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