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【スカイツリー成長記】

広がる弱い光 一方向へ導く

紫色の「雅」にライトアップされた東京スカイツリー=2010年10月、墨田区で

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 「何を夢みたいなこと言ってるんだ」。二〇〇八年末、東京スカイツリー事業主の東武タワースカイツリーとの協議の中で、パナソニック電工特品事業推進部の彦根修さん(41)は絶句した。

 当時はライトアップの内容や照明器具を開発する業者も決まっていなかったが、タワー社の担当者は「発光ダイオード(LED)だけでライトアップできないものか」と青写真を描いていた。

 LEDは省エネ効果が高く環境にやさしいとも評価されるが、当時は光が弱く、室内照明にも使われていなかった。スカイツリーのライトアップには、百四十メートル先を照らす強力な光が必要だ。光をどのように強くするのか。課題の実現は困難を極めた。

 最初はレンズを使い、光の届く距離を延ばすことに挑んだ。しかし、これだとレンズも大きくなり、照明器具が巨大化する懸念があった。

 それでも苦心して試作品を製作し、テストまでこぎつけた。自信はあったが、採用されなかった。ツリー仕様の規定サイズではレンズの大きさが足りず、光が弱かった。

 翌日、開発担当者らが集まり、対策を話し合った。根本的な発想の転換を迫られていた。重苦しい雰囲気の中、彦根さんは手元で絵を描き始めた。

スカイツリーに設置するLEDライトの開発について話すパナソニック電工の彦根修氏=港区で

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 昔から電球の光調節によく使われてきた反射板だ。これを生かせないかと考えていると、偶然にも同僚が話しかけてきた。「反射板は使えませんか」。アイデアの一致に懸けることにした。

 電灯であれ、LED灯であれ、光は発光体から放射線状に広がっていく。それを反射板を利用して、一つの方向に導けば、放射状に散るはずの光を集約でき、より強く遠くまで照らすことができる。彦根さんらはこの原理を用いて照明器具の規定スペースを有効活用することができた。LEDの性能も向上させた。

 昨年十月、試作品をツリーの塔体に取り付け、テストした。多くの見物客が詰めかけ、不安でいっぱいの中、第一展望台内で操作盤に向かった。点灯した途端、三百三十メートル下の地上から「オォー」という歓声が伝わってきた。「これでいける」。オールLEDを実現できると確信した瞬間だった。

 来年五月の開業後、ツリーは「粋」と「雅(みやび)」の江戸文化を光で表現する。「皆さんが夜空に輝くツリーを見上げて、明るい気分になってくれたらうれしい」。夢をかなえたライトアップで、日本に元気を与えたい。

  (月一回掲載していたスカイツリー成長記は、今回で終わります)

 文・小野沢健太/写真・笠原和則

 

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