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東京都知事選2014

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<2つの岐路>(下)暮らし 高齢社会の形は 開発か福祉優先か

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 医療や介護など「暮らし重視」か、都市整備など「開発優先」か。十三兆円の年間予算を握り、強い発信力を持つ東京都知事の判断は、これまでも国の政策を左右してきた。

 「国もとうとう後追いしたか、と思ったね」。一九七二年、国は老人福祉法を改正し、七十歳以上の医療費無料化に踏み切った。当時の都議、朝倉篤郎(あつろう)さん(85)は感慨深げに、前年の都知事選を振り返る。

 駅前を埋める群衆。湧き上がる「美濃部(みのべ)」コール。初の革新都知事として二期目に挑んだ美濃部亮吉氏は、都独自の老人医療費無料化など、福祉施策を次々と打ち出して圧勝した。都内の病院に高齢者が列をなし、涙を流して薬を受け取る人もいた。

 医療費無料化は数年で全国約八割の自治体に拡大。「医療制度を壊す」と反対だった国も、ついに折れた。朝倉さんは「都知事が民意をくんで決断すれば、国が変わる」と断言する。

●振り子

 都政の振り子が逆に振れると、どうなるか。石原慎太郎氏の二期目途中の二〇〇五年度から後継の猪瀬直樹氏まで、都が公共事業に充てた投資的経費は十年連続で増加している。

 外環道に首都高速…。開発事業の一つが、羽田空港(大田区)の第四滑走路。政府方針は「国内線は羽田、国際線は成田」だったが、石原氏は羽田の国際化に意欲を燃やした。

 〇〇年秋、当時の自民党政調会長の亀井静香氏に図面を持ち込み、その場で運輸省事務次官に電話。これで、翌年度の国の予算に調査費が付いた。

 国は、総事業費のうち一千億円を都から無利子で借り受け、第四滑走路を実現した。完成前年の〇九年と完成翌年の一一年を比べると、羽田の国際線乗降客数は二・七倍に増えた。

●あえぎ

 こうした開発志向は、公共事業や企業支援を中心とした成長戦略を掲げる安倍政権と重なる。しかし、その路線の裏に、消費税増税や社会保障改革で負担増にあえぐ人々がいる。

 障害児の放課後活動施設「こぴあクラブ」(江東区)。車いすの小学六年、中川萌(もえ)さん(11)は、筋肉が萎縮する先天性の病気。脳障害を併発し会話はできないが、友達とうれしそうに声を上げる。「一人っ子の萌にとって、ここは青春なんです」。母親の郁子さん(43)は言う。

 昨春の法改正で負担がずしりと重くなった。施設利用料の上限は、月約一万五千円から約三万七千円へ大幅増。都が補助を廃止し、国の措置も不十分なためだ。

 五〇年、日本の人口は九千二百万人に減り、六十五歳以上の割合は40%に達する。世界でも類を見ない「縮小・超高齢社会」を前に、このまま成長を目指すのか、弱者も暮らしやすい社会に重きを置くのか。

 国が岐路に立つ中、都のかじ取り役なら、方向性を打ち出せる。「都知事選は重い意味を持ちますね」。郁子さんは力を込めた。 (加賀大介、安藤恭子)

 

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