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【多様な性 自分らしく生きる】

(中)職場 「アライ」になろう

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 「お帰りください」。薬師実芳(みか)(26)は何も言えず退出するしかなかった。女性の体に生まれたが、男性として生きることを決意し、就職活動の面接の際に「性同一性障害で」と言った途端、面接官の態度が一変した。その後、採用された広告代理店はLGBT(性的マイノリティー)に理解があったが、教育現場での啓発や、当事者の就職活動の支援を目指し、半年で辞め、NPO法人をつくった。

 同僚から「そっち(ゲイ)系?」「彼女紹介しようか」と言われることにストレスを感じたゲイの男性(40)は、IT企業を辞め、外資系会社に転職した。

 頻繁に恋人の有無や好みの異性のタイプを同僚に尋ねられるのが苦痛で、パートナーを「彼氏」に置き換えて話をしているレズビアンの女性もいる。

 「当事者が安心して働き続ける上で、アライ(理解・支援者)の存在は大きな要素」。LGBTが働きやすい職場づくりを目指すNPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)代表の村木真紀(40)は指摘する。

 「私はアライ」。野村ホールディングス(東京都中央区)の社内では、あちこちの業務用パソコンに、虹色に彩られたステッカーが貼られている。

 LGBTに関する野村の取り組みは二〇〇八年九月、外資リーマン・ブラザーズの一部事業を継承した際、LGBTについて学び、情報発信する社内ネットワークも引き継いだことから始まった。リ社出身で野村証券人材開発部の東(ひがし)由紀(43)は「十五〜二十人の部署に一人はいる計算なのに、当時はいないものとされていた」と振り返る。

多様性の象徴である虹色のコーンやステッカーでLGBTへの理解を示す野村証券のオフィス=東京・日本橋で

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 社外の当事者に聞き取り、アライの必要性に気付いた。管理職や新人に向けた研修でもLGBTについて触れる。「7・6%の当事者が活躍できる職場にするには、残る92・4%がアライになる必要がある」

 東洋経済新報社が企業の社会的貢献度を調べた調査二〇一五年版によると、回答のあった千三百五社のうち、権利の尊重や差別の禁止など、LGBTに対する基本方針が「ある」と答えたのが百四十六社、何らかの取り組みをしているのが九十八社にのぼった。

 村木は「『彼女(彼氏)いないの?』『好みのタイプは?』といった質問は、異性愛が前提の人には盛り上げネタでも当事者にはつらい」と指摘。差別的言動をなくすだけでも当事者の勤続意欲は増すという。「お客さまにも従業員にも、LGBTはいることを忘れないで」 (文中敬称略・小形佳奈)

<アライ> 英語のally(同盟、支援)が語源で、性的マイノリティーを理解し支援する人。虹色ダイバーシティなどが行った「LGBTと職場環境に関するアンケート調査」では、アライがいる職場の方がLGBTのカミングアウト率は高く、カミングアウトしている人ほど勤続意欲が高かった。

 

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