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【多様な性 自分らしく生きる】

(下)教育現場 ありのまま認めて

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 「かわいいと言われてうれしい年じゃないだろ。普通にしなさい」。LGBT(性的マイノリティー)専門のウエディングプランナー七崎良輔(りょうすけ)(28)=東京都江戸川区=は中学一年の時、担任に言われた。「普通って何?」。言葉遣いを乱暴にしたり、脚を開いて腰かけてみたりしたが、無理する自分がつらかった。

 北海道で生まれ育ち、少女に人気のセーラームーンにひそかに憧れた。ゲイを自覚したのは十九歳の時。男性を好きになる男性がいるなんて、誰も教えてくれなかった。「おかま」「ぶりっこするな」。かつて浴びせられた言葉を耳にすると、今も胸が痛む。

 性的マイノリティーのための法整備を求める「LGBT法連合会」(東京都文京区)に加盟する全国五十一団体には、教師による人権侵害の例が多く寄せられる。「女子として生活しようと髪を伸ばしたら学校で丸刈りにされた」「いじめを見た担任に、おまえが悪いと言われた」…。

 「偏見・差別は、相手を知らないから起きる」。先月十日、横浜市立瀬ケ崎小では全学年を対象に「人権学習会」を開いた。講師役はNPO法人「ReBit(リビット)」のスタッフ。

 「『ジャニーズが好きなんだ』と言って『変なの』と返されたら悲しいよね」。スタッフの問いに、子どもたちは大きくうなずく。ありのままを受け入れることの大切さを、身近な例で考えさせる試みだ。

車座になり、児童に自分の体験を話す「ReBit」のメンバー=横浜市金沢区の瀬ケ崎小学校で

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 「男の子を好きになる男の子もいる」「体だけでなく心の性別もある」。子どもたちはスタッフからLGBTの基礎知識を教わり、体験談も聞いた。校長の大塚ちありは「当事者と出会うことで、差別に対して『おかしい』と行動する力を付けてほしい」と語る。

 「LGBTという言葉を初めて知った。そういう友達がいたら仲良くしたい」「男女関係なく生きたいように生きる。それでいい」。授業後、子どもたちからは素直な感想がもれた。

 ReBit代表の薬師実芳(みか)(26)によると、活動を始めた五年前は「本校にはLGBTはいない」「性的な話をするのでは」と避けられることもあったが、二百回二万人への授業を重ね、理解は少しずつ進んでいる。 (文中敬称略、小形佳奈)

◆「思春期の前に」

 現在、中学校では保健の授業で学習指導要領に基づき「思春期になると異性に関心が向く」と教えることになっている。しかし、駒沢大文学部の松信ひろみ教授(家族社会学)は「『自分はおかしい』と自己否定する思春期の前に、きちんと教えなければいけない」と指摘する。

 文部科学省は4月、自認する性別の制服着用や修学旅行での一人部屋を認めるなど、性同一性障害の児童生徒に配慮を求める通知を出した。相談体制の充実も呼び掛けたが、どう教えるかまでは触れていない。

 宝塚大看護学部の日高庸晴(やすはる)教授(社会疫学)が厚生労働省の研究事業の一環で教員約5900人に行った調査では「教員養成機関で同性愛について学んだ」と答えた人は7.5%。62.8%が「同性愛について教える必要がある」と答えた。

 日高教授は「セクシュアリティに悩む子は不登校や自殺未遂率が高く、生死に関わる問題だ。教育学部でのカリキュラム整備や自治体による研修実施の制度が必要」と語る。

<LGBTといじめ> 民間団体「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」が2013年、子ども時代を関東地方で過ごしたLGBT609人を対象にした調査で、7割が「学校でいじめを受けた」と回答。特に、心と体の性が一致しない男子の48%が身体的な暴力を、23%が性的な暴力を受けていた。宝塚大の日高庸晴教授がゲイ・バイセクシュアルの男性2万人を対象にした14年の調査では、55.7%が学齢期にいじめを受けていた。10代の22.7%に不登校の経験、17.6%に自傷経験があった。

 

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