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【わたしの春闘】

<ルポ編>派遣労働者 孤独な闘い 団結難しく雇い止めの不安

労働組合をつくりビラを配るAさん(左)と、支援する派遣ユニオンの関根秀一郎書記長(中)=川崎市内で(中沢佳子撮影)

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 今春闘で、派遣労働者が苦闘している。百三十四万人(昨年六月時点)に増えた派遣労働者。派遣される会社も労働条件もそれぞれに異なるため、団結・連携して派遣会社と賃上げ交渉をするのが難しい。交渉している労働者はいるが、「一人春闘」を強いられる人も。賃上げ交渉は難航している。 (中沢佳子)

 「同一労働同一賃金」を掲げる政府は、今週開いた一億総活躍国民会議で非正規労働者の待遇改善を決定。だが、派遣労働者は働く者の基本的権利である賃上げ交渉すらままならない。

 今月十七日、東京都新宿区内の貸会議室。派遣会社に登録する三十代の女性Aさんは、派遣会社の専務、労務担当の部長、社会保険労務士を前に訴えた。

 「時給二十円でもいいから賃上げしてほしい」。だが、会社側は「経営が危なくなる」と、ゼロ回答。来月再交渉することに。

 Aさんの時給は約千円。これまで倉庫作業員などとして派遣されてきたが、交通費を引くと、最低賃金(東京都は九百七円)も割り込んでしまう。苦しさに耐えかね五十円の賃上げを求めたが、交渉は厳しい。

 派遣労働者は団結したくても、条件の異なる企業にばらばらに派遣されており、連携が難しい。Aさんは一昨年末、非正規労働者を支援する派遣ユニオンの協力で労働組合を作った。だが、孤独な闘いでは、要求は通りにくい。

 「皆さんの権利確保や賃上げを交渉します」。Aさんは四月、団結して闘おうと派遣会社の入るビル前でビラを配った。登録者は二十万人(重複登録者も含む)もいるが、加わったのはまだ一人。「興味を持つ人は多いが、仕事がもらえなくなるのが心配で行動を起こさない」という。

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 人事や総務部門の派遣社員として五年働いてきた埼玉県内の女性Bさん(42)も契約更新のたびに、一人で賃上げを要求する。だが「派遣先がダメといっている」などとかわされることが多い。「雇い止めになるかもしれないのに、要求するのは大変」と訴える。

 人材サービスのエン・ジャパンの調査では、最近時給が上がった派遣労働者は16%。72%は賃上げがなく、交渉もしなかった。

 昨年、労働者派遣法が改正され、企業は人さえ代えれば、どの業務でも従来の三年を超えて派遣労働者を使い続けられる。不安定な立場の派遣労働者は増える可能性が高い。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「政府は派遣を増やし、格差拡大ばかりしてきた。同一労働同一賃金に本気で取り組む気があるのか」と疑問を投げかけた。

◆賃金上昇率に格差

 求人情報を扱うリクルートジョブズがまとめた関東など三大都市圏の派遣労働者の四月募集平均時給は、前年同月を2・4%上回る千六百三十二円。だが、一部業種が引き上げたのが実態だ。ウェブ関連など「クリエイティブ系」(千七百十八円)は前年同月より2・4%増だが、人数の多い「事務系」(千四百八十五円)は1・3%増、「医療介護・教育系」(千四百四十四円)は1・1%増と小幅にとどまっている。

 派遣の時給が会社と労働者の交渉で上がるケースはまれ。派遣労働者を新規募集する際、その職種について企業から引き合いが多いかどうかで決まる。その分、景気が悪くなればすぐ下がる。二〇〇八年秋のリーマン・ショック後は急落、翌年三月の事務系は前年同月比7・1%減(千三百九十一円)に落ち込んだ。

 

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