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【いま読む日本国憲法】

(特別編)9条や人権 歯止めに 伊藤弁護士が解説

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 先の大戦での甚大な犠牲を踏まえてつくられた日本国憲法。九条を筆頭に、二度と戦争を起こさないためのさまざまな規定が組み込まれている。終戦から七十一年となる十五日を前に、連載「いま読む日本国憲法」の特別編として、弁護士の伊藤真さんに解説してもらった。 (安藤美由紀、北條香子)

 −戦争につながった旧憲法は何が問題だったか。

 「旧憲法は立憲主義と国家神道を利用して国を統治しようとした。立憲主義が不十分で、国家神道は神権天皇制という形で軍部に利用され『国や天皇のために死ぬことは尊い』という考えが浸透していった」

 −日本国憲法の九条には一項の戦争放棄に加え、二項で戦力の不保持、交戦権の否認という世界的に先駆的な規定が盛り込まれた。

 「その通り。まず九条で軍隊自体を持たないと否定したのは、一番はっきりしている。天皇については一条で国の象徴でしかなく、四条で国政に関する権能を有しないとした。二〇条一項、三項と八九条で政治と宗教の関わりを禁じた。つまり軍隊、宗教、天皇制の三つが戦争へのアクセルとして機能しないようにした」

 −三つのアクセルを封じた以外には。

 「万一戦争に進もうとしたときブレーキをかけるため、戦争を否定する憲法の秩序そのものが守られる仕組みもいくつか用意した。『憲法保障』という」

 −具体的には。

 「九八条一項で憲法に反する法律は無効と明確にし、九九条で公務員に憲法尊重擁護義務を負わせた。八一条で違憲審査権を裁判所に認め、憲法に反する国家の行為に無効の判決を出せるようにした。四一条、六五条、七六条一項を根拠とする国会、内閣、司法の三権分立も憲法保障だ。明文化されてないものでは、政府が憲法に反する行為をする場合、国民が法律上の義務に従わない権利(抵抗権)も」

 −憲法は基本的人権の尊重も徹底している。

 「人々が人権を行使することで、政府の暴走を止めることも可能。(例えば)二一条の表現の自由。戦争反対の声を上げても取り締まられないことは、極めて重要な歯止めになる。戦前は学問も武器開発などで軍部に利用されたため、二三条の学問の自由も、戦争をさせない重要な仕組みと言っていい」

 「二五条の生存権も極めて重要。軍隊ではなく社会保障にお金を使い、貧困・格差をなくすことは戦争の原因をなくすことにつながる。二六条の教育を受ける権利は、戦前の皇民化教育を反省し、子どもたちが歴史から学べるようにした。普通選挙を保障した一五条は、戦争で最も被害を受ける市民の意志で政治を動かすということだ」

 −九条以外にも、不戦のための仕組みは多い。

 「画期的なのは前文の『平和のうちに生存する権利』。人権という、多数決でも奪えない価値として平和を規定した。たった一人が『自分の平和的生存権が侵害される』と司法に訴え、止めることができる」

<いとう・まこと> 1958年生まれ、東京都出身。法律資格の受験指導をする「伊藤塾」塾長。法学館法律事務所所長、日弁連憲法問題対策本部副本部長。

 

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