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【いま読む日本国憲法】

(46)第76条 裁判官 良心のみ従う

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 七六条から八二条までは「司法」の章です。現憲法は立法、行政、司法の三権を分けることで国家権力の暴走を防ごうとしていますが、本章で最初の条文の七六条にも、そうした思想が垣間見られます。

 一項は、司法権が最高裁判所と下級裁判所に属すると規定。裁判所法に基づいて高裁や地裁、家裁、簡裁が下級裁判所として置かれています。

 三項は「裁判官の独立」を定めた項。裁判官はだれからも命令や政治的圧力を受けることなく、ただ良心に従い、憲法と法律にのっとって裁判を行うという、大事な原則です。

 注目されるのは、二項の特別裁判所の禁止。特別裁判所は、特別な身分の人や出来事を扱うため、司法権を持つ裁判所の系列とは別に設けられる裁判所のことです。

 明治憲法下では、軍人を裁く軍法会議や皇室間の訴訟を扱う皇室裁判所がありましたが、現憲法は「法の下の平等」(一四条)に反するなどの理由で禁じたのです。

 裁判官を罷免するかどうかを決める弾劾裁判所は、裁判所とは別系列ですが、憲法自身が認める例外とされます(六四条)。人事院、海難審判所、公正取引委員会などは行政機関ですが、裁判所に似た役割を果たします。結果が不服なら裁判所に訴えることができるので、特別裁判所ではないと判断されています。

 自民党の改憲草案は、七六条は現行憲法とほとんど同じですが、新設する九条の二の五項で「国防軍に審判所を置く」と定めました。草案Q&Aは「審判所とは、いわゆる軍法会議のこと」と解説しています。

 一般的に軍法会議は戦場行きを拒んだ兵士らを裁く場で、非公開で行われる可能性があり護憲派が強く批判していますが、特別裁判所の設置を禁じた七六条との矛盾も指摘されます。

    ◇

 「読むための日本国憲法 東京新聞政治部編」(文春文庫)をベースに、憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。

◆自民党改憲草案の関連表記

 七六条

(2)特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、最終的な上訴審として裁判を行うことができない。

((1)(3)は略)

 九条の二

(5)国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

 

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