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【御料牧場の四季 皇室の農を探る】

[第3回](下)雉子酒 無病第一 祝いのキジ

雉子酒のため飼育されているキジ。手前が雄で、奥が雌=栃木県高根沢町の宮内庁御料牧場で(見目清さん撮影)

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 穏やかな空気が流れる牧場の丘陵地の一角に、緊張感が漂う場所がある。キジが飼育されている鶏舎だ。

 敷地入り口にある鉄格子のゲートには「伝染病予防のため立入禁止」の看板が掲げられる。鳥インフルエンザ予防のためだ。

 「とにかく飼育担当者以外は接触させないことが最大の防除策」と牧場の増渕繁庶務課長(52)は説明する。

 このキジは毎年十二月末に出荷される。新年の「御祝先付(おいわいさきづけ)」と呼ばれるお膳で、天皇、皇后両陛下が召し上がる雉子酒(きじしゅ)を作るためだ。

 宮内庁大膳課によると、キジの胸肉に塩を振り、重しをして水分を出す。これを焼いて薄切りにし、温度が五〇〜六〇度の純米大吟醸の「温酒(おんしゅ)」を注いで作る。

 雉子酒がいつから新年の宮中で供されるようになったのかは定かではない。

 明治時代の能楽師、梅若実(うめわかみのる)が書いた「梅若実日記」によると、明治二十五(一八九二)年正月、宮家の一つ、伏見宮(ふしみのみや)にお伺いした際、雉子酒が提供されたという記述がある。 

 キジの正式名称はニホンキジ。牧場でふ化し、飼育したキジは約百六十羽。このうち約五十羽が昨年十二月二十日、宮内庁に出荷された。

 キジのいる鶏舎敷地内へカメラマンも立ち入れないため、記者の持っていた一眼レフを託し、養鶏係長の見目清(けんもくきよし)さん(50)に撮影してもらった。

 養鶏係は五人。見目さんは「一部屋ごとに雄一羽に雌五羽を入れて育てている。キジの雄は繁殖力が高いですから。食べられるのは雄だけですけどね」と笑った。(蒲敏哉、高橋淳)

 

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