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【背信の根 検証・森友問題】

(4)「1194分の1」の特例適用 決裁文書に「昭恵氏」 理財局幹部「覚えてない」

衆院予算委で野党議員の質問に答える財務省の太田充理財局長。森友学園との取引について「特例処理を行った事例は本件のみ」と答弁した=2017年11月28日、国会で

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 「えらいローカルな個別案件という印象。なぜこんなものが決裁に上がってくるのかな、と思った」

 二〇一五年に財務省理財局で、森友学園との国有地取引の決裁業務に関わった幹部が振り返った。決裁した案件は、売却を前提に国有地を学園に貸し付けるという内容だった。

 国有財産のうち、普通財産の処分権限は原則、財務相にあるが、訓令で各地方の財務局長に委任されている。「通常は国有地を売るにしろ、貸すにしろ、財務局決裁で終わる。各地の個別案件が本省に上がることはまれだ」と話す。

 学園は小学校開設のため国有地の取得を希望していた。ただ、金融機関から資金を借り入れた場合、総資産に占める負債の比率が30%を超え、設置認可のための大阪府の審査基準に抵触する恐れがあり、「学校経営が安定するまでは国有地を借り受け、八年後に購入したい」と申し出ていた。

 財務省の通達では、教育などの公益事業に使われ、財務局長がやむを得ない事情があると認めれば「三年間、新規の貸し付けができる」とされている。ただし貸付期間を延ばす場合、本省の決裁が必要だった。

 そのため一五年二月、近畿財務局から本省に「特例承認」の申請があり、当時の理財局次長ら十八人が決裁に関わった。決裁資料には、安倍晋三首相(63)の妻昭恵氏(56)や複数の政治家秘書らが登場する資料が添付されていた。

 資料には籠池(かごいけ)泰典被告(65)について「日本会議大阪をはじめとする諸団体に関与」とあり、「日本会議国会議員懇談会」の役員として麻生太郎財務相や安倍首相らの名前があった。籠池被告は一一年に会費未払いで日本会議を退会したが、その後も名刺に肩書を残していた。

改ざん前の財務省の決裁文書には、安倍晋三首相や妻昭恵氏ほか、さまざまな政治家の名前があった

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 ほかにも「昭恵総理夫人からは『いい土地ですから前に進めてください』とのお言葉をいただいた」という学園側の発言や、平沼赳夫衆院議員の秘書から本省に「国有地の貸付料が高額であり、何とかならないか」と電話があったことなどが記載されていた。

 冒頭の財務省幹部は「昭恵夫人や政治家の名前を見た記憶はない」と決裁への影響を否定したが、これらの記述は国会で追及が始まると、根こそぎ削除された。別の理財局幹部は野党の質問に「決裁時にはそこまでちゃんと見ていなかったので、覚えていない」と答え、痛烈な批判を浴びた。

 「はんこを押した当人が決裁文書を読んでいないと公然とおっしゃる。役所として、たがが外れすぎじゃないか」。枝野幸男・立憲民主党代表の追及に、麻生財務相は「私自身も正直、読んでいない書類に決裁のはんこを押していることはあります」と開き直った。

 省内でいいかげんな決裁が行われているとあえて認める一方、異例となった国有地の長期貸し付け契約に昭恵氏や政治家の影響はなかったと強調したのだ。

 それでも便宜を図った疑念がぬぐえない一つのデータがある。一二〜一六年度の五年間に財務省が公共随意契約で国有財産を売却したのは千百九十四件に上った。そのうち売却を前提に三年を超えて貸し付けるという特例を適用したのは森友学園の一件だけだった。

(2018年7月5日)

 

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