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【背信の根 検証・森友問題】

(7)政権の政治責任棚上げ 自殺職員、最期まで苦悩

近畿財務局が入る大阪合同庁舎4号館。財務省本省からの指示で決裁文書の改ざんが行われた=大阪市中央区で

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 四月下旬、岡山県内の閑静な住宅街。三月七日に神戸市の自宅で自ら命を絶った財務省近畿財務局の男性職員の実家を訪ねた。四十九日法要を終え、年老いた父親は「もう済んだことですから」と口をつぐんだ。

 「役人っぽくなく、気さくでよく笑う人だった」と話したのは県内に住む男性の親族。「あの人が自分からやるわけない。自殺するなんて本当につらかったんだなあって…」

 男性はノンキャリアの上席国有財産管理官だった。ある財務局職員は「一昨年七月の定期異動で森友学園の担当になったと思う。真面目な人だった」と話す。

 昨年二月、学園の問題が国会で取り上げられると職場は対応に追われた。本省から矢継ぎ早に資料請求があり、勤務は終電後の深夜に及んだ。二月下旬からは本省の指示で、決裁文書の改ざんが始まった。

 男性は同年九月ごろから病気で休職していた。周囲には「七月の定期異動で、希望がかなわず残ってしまった」と漏らしたという。捜査関係者によれば、男性は遺書のほかにメモを残していた。「勝手にやったのではなく財務省からの指示があった」「このままでは自分一人の責任にされてしまう」。改ざんを最期まで苦にしていた。

 財務省の内部調査では、改ざんは安倍晋三首相(63)の「私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める」という答弁を機に始まった。財務局では、首相の妻昭恵氏(56)や政治家関連の記載をチェックし、本省から送られてきた「書き換え案」に沿って改ざんが行われた。学園との応接録は保存期間が過ぎているとして廃棄した。

 報告書からは、財務局の現場が改ざんに強く抵抗した様子がうかがえる。一部の職員は本省の指示に反発して管財部長に相談。部長が当時の中村稔理財局総務課長と協議したが、反発した職員を外して作業を続けるというありさまだった。

 現場の抵抗は続き、昨年三月下旬には、理財局の書き換え案がどの程度反映されたか、確認できなくなった。最後に押し切ったのは当時の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長。「必要な書き換えは行う必要がある」。その意向は部下から財務局に伝えられ、改ざんは続けられた。

 「組織の人間なら自分が納得いかないことでも、上から命じられればやらなきゃいけない時はあるでしょう」。近畿財務局のあるOBは悔しそうに言った。

 「組織というより個人、関わった人たちの判断が大きかった」。麻生太郎財務相は責任を官僚や現場の職員に矮小(わいしょう)化させ、自身や安倍政権の政治責任は棚上げにしたままだ。

 政権を揺るがすもう一つの加計(かけ)学園問題で、元首相秘書官が愛媛県職員と面会した認識はないと国会で説明したのを受け、同県の中村時広知事はこう語った。「うそというのは発言者にとどまらず、第三者、他人を巻き込むことになる」

 森友学園への国有地払い下げ問題は、抵抗する現場の職員を巻き込んで財務省の組織的な不正に発展し、自殺者を出すに至った。背信の根は、政治責任すら取ろうとしない政権に、底無しに広がっている。

 =おわり

 (この連載は、藤川大樹、望月衣塑子、山田雄之、山田晃史、西川正志が担当しました)

(2018年7月4日)

 

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