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【権力の内幕 検証・加計疑惑】

第1部(3)獣医師会に危機感 親しい政治家は「安倍晋三さんです」

2017年6月の日本獣医師会総会後、国家戦略特区による獣医学部開設に疑念を示す北村直人顧問(中)=東京都内で

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 愛媛県今治市に獣医学部を新設しようと、加計(かけ)学園や市が動きだしたのは二〇〇六年。動向に神経をとがらせていたのは獣医師でつくる「日本獣医師会」だった。

 〇七年二月、東京・赤坂の料亭。元衆院議員で獣医師会顧問の北村直人(71)は、加計学園理事長の加計孝太郎(67)と向かい合った。「今治市に獣医学部をつくりたいんです」。そう語る加計だったが、北村には獣医学教育への熱意は感じられなかったという。

 「親しい政治家はいるんですか」と水を向けると、予想外の答えが返ってきた。「安倍晋三さんです」。時の首相の名前だった。北村の脳裏に加計学園の名前が刻み込まれた。

 この頃、農林水産省では獣医学部開設の布石が打たれようとしていた。獣医師の需給見通しを探るため、有識者による検討会が発足。農水省関係者は「獣医師が足りないとの結論が出るよう上から指示されていた」と証言する。だが、「獣医師は足りている」と獣医師会が待ったを掛けた。検討会の報告書は明確な表現を避け、両論併記となった。

 学園と市が構造改革特区で学部開設に挑んだのは、報告書が出て半年後の〇七年十一月。以来、毎年のように特区を申請したが、大学の設置認可を握る文部科学省に阻まれた。元同省幹部は「真剣に取り合う雰囲気でもなかった」と話す。

 獣医学部開設の動きはいったん下火となったが、一二年末、獣医師会に再び危機感が高まる。安倍の二度目の首相就任だ。翌年三月の理事会では「安倍政権に代わり、文科相からの指示で担当局長、課長が規制緩和の方向に転換しつつある」と危ぶむ声が上がった。北村は「安倍さんが総理に返り咲き、再び加計側の動きが活発になった」と言う。

 「麻生会長へ相談し、文科省に抗議の声明文を提出していただいた」「麻生会長も総理と会談され、説明を尽くされている」。理事会の議事録からは、自民党の獣医師問題議員連盟会長で副総理の麻生太郎(77)の政治力で、対抗したことがうかがえる。

 北村は一四年三月、東京・南青山の日本獣医師会で、加計と再び対面した。うつむく加計に「安倍さんに言われて来たんですか」と尋ねると、加計は顔を上げた。「獣医学部をつくりたい」。面会は十五分足らずで終わった。北村は加計が「仁義を切りに来た」と感じた。

 加計はその後、政界への接近を強める。相手は安倍の側近の文科相、下村博文(64)だった。 (敬称略、肩書は当時)

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(2018年8月14日)

 

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