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【権力の内幕 検証・加計疑惑】

第2部(3)ライバル出現に焦り 「加計ありき」に誤算

鳥インフルエンザが発生した鶏舎を消毒する自衛隊員。京都産業大はこのころから獣医学部新設の検討を始めていた=2004年3月、京都府内で(陸上自衛隊第3師団提供)

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 首相官邸サイドが文部科学省への圧力を強めていた二〇一六年秋。国家戦略特区で獣医学部の新設を目指していたもう一校、京都産業大は着々と準備を進めていた。「提案内容には自信があった。加計(かけ)学園は最初からライバルとは見ていなかった」。中心になって計画を進めた元教授の大槻公一(76)が振り返る。

 京産大は一九八九年に生物工学科を新設、獣医学部につながるライフサイエンス(生命科学)研究に早くから取り組んできた。加計学園の加計孝太郎(67)が理事長になる十年以上前で、はるかに先行していた。

 獣医学部の検討を始めたのは〇四年。国内で七十九年ぶりに発生した鳥インフルエンザの猛威が京都にも及んでいた。

 感染症リスクの研究を本格化させようと、〇六年には鳥インフルエンザ研究センターを開設。センター長に鳥インフルの研究で世界的権威の大槻を招いた。大槻は「大学幹部から『獣医学部をつくる作業も任せたい』と特命を受けた」と明かした。

 府は一五年、周辺四県と連名で、京産大の獣医学部設置を文科省や農林水産省に要請。綾部市に用地を確保し、一六年三月、京産大と共同で特区を申請した。加計学園が特区申請の際、愛媛県と今治市の陰に隠れたのとは対照的だ。

「獣医学部新設を巡る国の対応は不公平だ」と話す京都産業大の大槻公一元教授=鳥取市で

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 申請では加計学園に九カ月の後れを取ったものの、京産大は十月に開かれた特区ワーキンググループで、各委員に二十一枚の詳細な資料を提示。いかにライフサイエンス分野の獣医師が求められているか、創薬研究で京都にどれほど強みがあるかを熱心に説明した。府の担当者は「委員に評価してもらえた」と手応えを感じた。

 大槻は申請前に内閣府地方創生推進室次長の藤原豊(55)を訪ねたときのことを鮮明に覚えている。「今治はずっと前から努力している。今ごろ持ってくるなんて遅いんじゃないか」。京産大には批判的な藤原だったが、最後に「また説明してほしい。宿題です」と言ってつぶやいた。「(今治側にも)同じように宿題を出しているんだが」

 今になってみると、大槻は「藤原さんは焦っていたんじゃないか。今治の計画は十分でなかったのかもしれない」と思う。実際、今治市が準備した資料は京都の七分の一の三枚だった。

 大槻たちは特区認定に手応えを感じていたが、首相の安倍晋三(63)が議長を務める特区諮問会議は一六年十一月、獣医学部開設に新たな要件を追加した。それにより京産大は計画断念に追い込まれることになる。 (敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 

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