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【権力の内幕 検証・加計疑惑】

第2部(5)新設4条件 置き去り 「議論せぬまま特区認定」

2017年1月20日、加計学園を獣医学部開設の事業者に選んだ国家戦略特区の諮問会議であいさつする安倍首相(中)。首相はこの日まで学園が学部開設を目指していたことを知らなかったと答弁している

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 二〇一七年一月二十日、首相官邸で開かれた国家戦略特区の諮問会議は、愛媛県今治市で獣医学部を開設する事業者に加計(かけ)学園を選んだ。後に首相の安倍晋三(63)が国会答弁で「学園の学部開設計画を初めて知った」としたのがこの日だ。

 「国家戦略特区に指定した今治市で、画期的な事業が実現します」。諮問会議の席上、議長の安倍は学園の構想を持ち上げた。

 そのころ、文部科学省関係者は顔をしかめていた。「中身はスカスカ。どこが特殊な獣医学部なんだ」

 愛媛県と今治市が一五年六月に特区を申請した後、内閣府は「既存の大学では対応できない」「新しい分野のニーズがある」など、学部の新設に必要な四つの条件を設けた。

 ところが、特区ワーキンググループで審議が始まっても、どこからも具体的な獣医師需要は示されぬままだった。

 それにもかかわらず、民間委員たちは規制緩和に前のめりだった。「四条件を満たすかどうかの立証責任は文科省にある」と主張する委員も。獣医学部の必要性がない根拠を示さなければ、新設を認めると言い出した。

 実は学部開設が現実味を帯びてきた一六年十月、文科省は市の担当者を内々に呼び出していた。「最悪の場合を想定し、四条件に見合う構想かどうかを確認するためだった」という。

 説明したのは同行した学園の担当者。文科省関係者は「内容は抽象的で、これでは四条件をクリアできないと思った」と証言する。省内では「開学を一年延期したほうがいい」との意見まで出たが、一八年四月の早期開学を実現したい内閣府に押し切られた。「四条件を満たしているのか、誰も議論しないまま特区に認定された」。関係者は今も釈然としない思いでいる。

 学園の構想が特区に認められると、後は文科省の審査を残すだけとなった。大学や学部を新設する場合、審査を申請する約一年前から文科省に相談するのが一般的だが、申請までに学園に残された時間は二カ月余りしかなかった。

 「あまりに出来が悪く、事前相談は通常の倍近い週二回ペース。一回の相談も四、五時間かかっていた」と文科省関係者は突貫工事ぶりを打ち明けた。「それでも他の大学並みのレベルにも届いていなかった」

 学園は一七年三月、文科省に獣医学部の設置を申請した。「審査で相当厳しいことを言われる可能性がありますよ」。担当者の指摘はその後、現実となる。(敬称略)

(2018年8月14日)

 

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