東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 権力の内幕 検証・加計疑惑 > 記事

ここから本文

【権力の内幕 検証・加計疑惑】

第2部(7)「いいね」文書で窮地 政権に「不都合な真実」次々

愛媛県作成の「首相案件」文書について、4月11日の衆院予算委で「コメントする立場にない」と7回繰り返した安倍首相。直後の共同通信の世論調査で、首相の説明に「納得できない」との回答が79.4%に上った

写真

 吐く息が白い二月の早朝。東京都内の閑静な住宅街から、経済産業省ナンバー2の経産審議官の柳瀬唯夫(57)が姿を現した。

 首相秘書官当時の二〇一五年四月、加計(かけ)学園や愛媛県の幹部らと首相官邸で面会した人物。取材班は「本件は首相案件」という柳瀬の発言を記した県作成の文書を入手し、話を聞こうと外で待っていた。

 柳瀬は突然の来訪に驚くそぶりも見せず、「そんなこと言うとは思えないけど。会ったという記憶がないんだよ」と繰り返した。

 文書には首相の安倍晋三(63)と学園理事長の加計孝太郎(67)が会食し、獣医学部の話題が出たという記述もあった。事実なら「学園の学部開設計画を知ったのは一七年一月二十日」とする安倍の国会答弁がうそだったことになる。

 その確認を求めると、平静を保って歩いていた柳瀬が突然、声を上ずらせた。「本当、それ? 全くない、全くない」

 三月に入ると、安倍政権にとって「不都合な真実」が次々と明るみに出た。

 森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題や防衛省が「存在しない」としてきた陸上自衛隊のイラク派遣時の日報問題。さらに追い打ちを掛けたのが「首相案件」文書だった。

 四月初めに本紙などが文書の存在を報道すると、政権批判がさらに強まった。

 「うそをついているのは県の担当者か柳瀬さんか」。そう野党が攻め立てると、安倍は「県の文書に国はコメントする立場にない」と言い逃れた。そこへ新たな「加計ありき」を示す文書が突きつけられる。

 五月下旬、国会の要請で県が提出した二十七枚の新文書。学園側から受けた報告を記録した文書には、一五年二月二十五日に安倍と加計が面会し、安倍が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたとあった。安倍の国会答弁と矛盾するだけでなく、直接関与をうかがわせる物証に国会に衝撃が走った。

 安倍と学園側は面会を否定したが、県知事の中村時広(58)は提出した文書を「何も改ざんする必要がない。ありのままの報告書類」と信ぴょう性を強調した。

 窮地に立つ安倍。与党内からも説明責任を問う声が上がり、今秋の自民党総裁選に暗雲が立ち込めようとしていた。そんなとき、県の関係者はあるうわさを耳にした。「首相と加計理事長の面会を『事務局長のうそだった』ことにし、幕引きさせようとたくらんでいる」

 そんな話をいまさら誰が信じるのか−関係者は、このときはうわさを歯牙にもかけなかった。(敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 

この記事を印刷する

PR情報