2016年度 東京自遊大学資産運用学科
開校以来、四半世紀の伝統を誇る東京自遊大学。2016年12月4日(日)、コンベンションルームAP西新宿を会場に資産運用学科を開催した。まずはファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が、「より豊かなセカンドライフをおくるための資産運用とは」と題してレクチャーを展開。次いで財務省理財局 国債企画官の百目鬼宏氏が個人向け国債の商品性を解説した。
貯蓄から投資へ。将来をより豊かに暮らすために。
 深野氏がまず取り上げたテーマは、年金だ。「公的年金は大丈夫なのか、ちゃんともらえるのかとよく聞かれますが、現状からすれば制度が破たんする可能性はごく低いと思います。ただし、今後の制度改正で実質的な支給額がじわじわ減っていくことは避けられないでしょう」
物価が上がっても年金が減る!?
 11月末、衆議院を通過した年金制度改革法案からは、そうした流れが明らかに読み取れる。「物価が上昇した場合、現状の年金制度では物価上昇率からスライド調整率を差し引いた分、支給額が増えます。その数値がマイナスでも減額はされません。しかし改革法案ではスライド調整率が物価上昇率を上回る分、支給額が削減されます。さらに、物価が上がっても現役世代の賃金が下がった場合など、賃金に合わせて年金が減額されるルールも導入されます」
 もはや年金にかつてのような頼もしさは期待できないということ。国民年金の保険料納付期間(現在は20歳から60歳まで)の延長、支給開始年齢(同65歳)の引き上げなども、近い将来、改正項目に盛り込まれる可能性が高いという。
セカンドライフの「3W1H」
 「日本人の平均寿命は、今や男性も80歳超。100歳以上の高齢者は6万人を超えています。セカンドライフを考える際には、年金のパワーダウンにも増して人生の長期化を考慮すべきです」
 長寿を念頭に深野氏が提唱するのは、”3W1H”に着目したリタイアメントプランの立案だ。
「3つのWの第1はWHEN。完全にリタイアするのはいつかということです。それが60歳の人と70歳まで働く人とでは、老後資金としてあらかじめ準備すべき金額が大きく違ってきます」
 次にWHO。つまり誰と(何人で)生活するのか。人数によっても顔ぶれによっても生活費は変わる。想定される生活費を想定される期間分、積み上げ方式で計算すれば、生活費として必要な金額を割り出せることになるわけだ。
「もっと大事なのがWHERE、どこを終の棲家とするかです。住む場所が違えば生活費は大きく変わります。都会はなにかと便利な分、田舎と比べたら月々のコストが数万円も高かったりする。10年タームで考えたら数百万円違うことになります。年を重ねると身動きを取りづらくなりますから、買い物の場所、病院といった生活インフラの条件も見落とせないポイントです」
リタイヤメントプラン3つの鍵 医療費増大を健康管理で防ぐ
 老後に向けた準備は資産運用だけでは不十分。深野氏は生活のダウンサイジングと健康管理を加えた3方向のアプローチを勧める。
「年金だけでは足りない部分を資産形成で補うのが無理なら、生活水準を下げざるをえません。いきなりガクンと下げるのは難しいので、数年かけて少しずつダウンサイジングしていきましょう。健康管理も大事。下流老人という言葉がありますが、原因の多くは病気による医療費負担の増大だといいますから」
 リタイアメント世代の資産運用で特に重要なのは、物価上昇への目配りだという。
「近ごろ目につくのは、食品などが価格をいじらずに量を減らす形で実質的に値上げされるケース。これは統計には表れません。公表される数字よりも、生活実感をベースに物価を判断したほうがいいと思います」
NISAなど公的制度を徹底活用して豊かなセカンドライフをおくろう
 具体的にどんな手段を使うべきだろうか。
「安全確実にこだわるなら個人向け国債でしょう。おすすめは期間10年のものを買って、必要なときに解約すること。1年間は解約できませんが、その後はいつ解約してもメガバンクの定期預金を上回る利息を稼げます。どんなに金利が下がっても0.05%が最低保証されるのも魅力。これはメガバンクの定期預金金利の5倍です」
 リスキーな投資の大原則は必ず余裕資金で行うこと。公的制度の有効活用も忘れてはいけない。「来年度、積立型が出る予定のNISAも、掛け金全額を所得から控除できる確定拠出年金も、ぜひ上手に利用したいところです」
 財務省の百目鬼氏は個人向け国債の魅力を解説。特に新鮮に響いたのは、国債を直接買うことのメリットだ。「一般家庭の金融資産、約1700兆円のうち半分以上は現金か預金ですが、銀行などの金融機関は預金の多くを国債で運用しています。つまり預金のある方は間接的に国債を持っているということ。しかし間に仲介者が入ると、必ず何らかの手数料が発生します。直接購入により、少しでも有利に資産を殖やしていただくために開発したのが個人向け国債です」
 そして、金利と信用力の関わり。金融商品を選ぶとき、つい金利の高いものに傾きがちだがそこには必ず理由があるという。「金利が高い社債などがありますが、それは信用力が低いから。リスクが高い分、金利を高くしないと買ってもらえないのです」
 逆にいえば国債の金利が低いのは、それだけ国の信用力が高いため。個人向け国債には、さらに安全性を高めるための仕組みが導入されている。通常の国債は期間中に換金すると元本割れする可能性があるが、個人向け国債は1年過ぎればいつでも額面価格で買い取ってもらえる。つまり元本割れの怖れがない。
「個人向け国債は期間3年、5年、10年の3種類。3年と5年は固定金利、10年は変動金利です。お金が必要になる時期に合わせて期間を選ぶのが基本ですが、これから金利が上がるとお考えなら変動金利を選んだほうがいいでしょう。お近くにあるほとんどの金融機関で、1万円からご購入できます」
 次いで参加者からの質問に、百目鬼氏が答えた。

【Q】2年国債を購入したことがあるが、現在は発行されていないのですか?
【A】通常の2年国債は今も毎月発行されています。以前はこれを個人の方でも買えるように新窓販(新型窓口販売方式)国債として販売していました。しかし、現在はマイナス金利となっているため、個人の資産形成のお役には立てないと考え、取り扱いを見合わせています。
 今後、いつお求めになれるようになるかは金利情勢しだい。新窓販国債には2年物のほか5年物、10年物があります。

参加者の声
今60歳、定年退職したばかりです。お金は銀行に預けてるだけで、特に資産運用はしてません。このままでは資産が減る一方なので何かしなくてはいけないと思い、この講座に参加しました。深野先生のお話を参考に、個人向け国債を選択肢のひとつとして、いろいろ検討したいと思います。(横浜市・Kさん)
40代の会社員と専業主婦の夫婦です。住宅ローンを完済する5年後から、資産形成に本腰を入れようと思っています。今、家計に余裕があるのは子どもがいないから。逆にいえば老後を子どもに頼れないので、気を抜けません。リスクは避けたい私たちにとって、今日のお話はとても有意義でした。(川越市・Sさんご夫妻)
深野氏
 
<プロフィール>
深野康彦(ふかのやすひこ)氏
ファイナンシャルリサーチ代表
1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社後、金融資産運用設計を研鑽して1996年に独立。現在の有限会社ファイナンシャルリサーチを2006年に設立(起業2社目)。
資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行い、新聞・マネー雑誌、経済誌などへの執筆・取材協力および金融商品などのデータ提供を行いながら、多くのテレビ、ラジオに出演している。
主な著書:『これから生きて行くために必要なお金の話を一緒にしよう』(ダイヤモンド社)、『あなたの毎月分配型投資信託が危ない!』(ダイヤモンド社)、『1万円から始めるETF投資』(日本経済新聞出版社)など多数。新著は『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)
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