「絶対に負けたくない」。サヨナラの危機に気持ちが前のめりになった西武台千葉の津花康平投手に、つめの先まで神経をとがらせた持ち前の緻密(ちみつ)な制球は難しかった。
5−5の九回裏二死一、三塁。内角を攻めた変化球が甘く外れた。「打てばヒーロー」と気楽に打席に立った千葉経大付の八坂陸選手は失投を見逃さなかった。右前へ打球が飛び、津花投手はマウンドに崩れ落ちた。勝敗を分けたのは土壇場の冷静さだった。
春の県大会でも千葉経大付と戦い、先発して0−10で大敗。宿敵の打倒を目指し泥にまみれてきた。力の差をどれだけ縮めたかは、この日のスコアが物語る。勝った千葉経大付の斎藤圭祐投手も「制球力がよくなっていた。(投球)内容は自分の完敗だった」
「おまえは本当に良くやったよ」。津花投手に声をかけたのはこの日試合に出なかった三年生の大谷旦選手ら。先輩に励まされるたびに二年生エースは土にまみれた手で涙をぬぐった。 (武田雄介)
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