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【東京新聞の事件報道ガイドライン】

本紙ガイドラインの概要 犯人視避け公正に

2009年2月15日

 事件・事故の報道に携わる記者たちの新しい「海図」が出来上がった。東京新聞(中日新聞社)の「事件報道ガイドライン」。事件担当デスクや紙面編集を担当する整理部デスクを中心に約一年間にわたって検討し、事件や事故を報じる重要さをあらためて確認。その上で、情報の出所を明示したり、逮捕容疑を明確にしたりするなど、より公正で客観的な報道を目指し、記事スタイルを改めた。三月から実施する。

◆「情報の出所」を明示する

 事件・事故についての情報は、圧倒的に捜査当局に取材したものが多いが、そこには主観や誤導が入り込む可能性がある。弁護側に取材したものも同様にバイアス(偏り)がかかっている恐れがある。

 特に事実関係に争いがあるケースでは、互いに自らに有利になるよう情報提供することも考えられるが、情報源があいまいなままでは、読者はそうした「前提」を意識して読むことができない。

 今後は、読者に判断材料を提供するため、「○○署によると」「□□容疑者の弁護士によると」といったふうに可能な限り情報源を明示していく。

◆「逮捕容疑」は区別して書く

 逮捕容疑について、これまで本紙は「調べでは、〜した疑い」などと書いてきた。しかし、この書き方だと、書かれていることが逮捕容疑なのか、ほかの捜査情報を含むのか明確ではない。

 読者の中には「新聞社の調べ」と誤解している人もいた。今後はそうした誤解を防ぐため、「逮捕容疑は、〜としている」「〜とされる」などと明示し、逮捕容疑の内容に絞って書くことにした。書類送検や短い記事の場合は「容疑は、〜としている」「〜とされる」などとする。

◆「否認」の主張は必ず盛り込む

 容疑者が逮捕容疑について認めているか否認しているかは、読者が事件の内容について判断する上で、重要な要素となる。

 認否については、これまでも原稿に盛り込むことが多かったが、今回、否認していることが分かった場合は必ず、その旨を書くことを明記した。

 供述は容疑者・弁護側から取材することが望ましいが、捜査段階では弁護士がついていなかったり、誰か分からなかったりすることもある。そうした場合は、捜査当局を通じて供述を取材し、情報源を明示した上で、認否を明らかにする。

◆「現行犯逮捕」でも断定しない

 現行犯逮捕のケースでは、これまで「強盗の現行犯で、○○容疑者を逮捕した」といった書き方をしてきた。しかし、痴漢冤罪(えんざい)事件など、現行犯で逮捕されても「犯人」とは限らず、裁判で無罪となることもある。

 そこで今後は、現行犯逮捕の場合でも通常の逮捕と同様に「強盗の疑いで、○○容疑者を現行犯逮捕した」などと「疑い」を付け、あくまでも「容疑」がかけられた段階であることを明らかにするようにした。

 ただし、衆人環視の中で起き、逮捕された容疑者の犯行であることがはっきりしている場合は、これまで通りの表記とする。

◆「余罪」や別件逮捕 明確に区別

 窃盗事件などでは、余罪の多さがニュースになることがある。しかし、逮捕容疑そのものは少額の窃盗にすぎず、あとは捜査当局の「見立て」にすぎないことが珍しくない。

 そこで、今後は逮捕容疑と余罪の見立てを明確に区別し、まず逮捕容疑を書き、その後、情報の出所を明記した上で、容疑以外について書くことにした。

 「余罪」という言葉は、既に罪があることが前提となるので原則として使わず、例えば「警視庁によると、○○容疑者は『ほかにも百軒以上に盗みに入った』と供述している」などとする。

 別件逮捕も同様で、まずその段階の逮捕容疑について書く。より重大な事件への関与の可能性がある場合は、「○○さん殺害についても関連を調べる」などと付記する。

◆「無罪推定」の原則を尊重

 事件の背景を理解する上で、容疑者・被告の成育歴や友人関係などのプロフィル(横顔)は重要な要素となる。

 だが、刑事司法の原則は「無罪推定」。容疑者らを犯人と断定できない段階、特に否認しているケースでは、犯人視した報道は避けなくてはならない。

 仮に当事者が犯行を認めている場合でも、不当におとしめることは許されない。近所の人の憶測を裏付けなしに記事にしたりせず、情報の出所を示して、信頼できる情報を節度を持って書く。

◆前科・前歴は必要性を吟味 

 前科・前歴は原則として書かないことになっている。かつて罪を犯したとはいえ、刑期を終えれば更生したと見なされるからだ。

 しかし、例えば、殺人犯が出所後に再び殺人を犯したとして逮捕されたり、拳銃を使った犯罪を繰り返したりした場合は、現在の事件の背景を理解するために、過去の犯罪に触れざるをえない。

 前科・前歴の掲載はその必要性を吟味し、慎重に判断する。

◆「起訴事実」は「起訴内容」とする

 容疑者が起訴された段階では「無罪推定」が働いている。また、起訴状の描く構図の通りに裁判で事実認定されるかどうかは分からない。これまでは「起訴状によると〜した」と断定的に書いてきたが、裁判員に予断を与えたり、憲法で定める「公平な裁判を受ける権利」に影響を与えたりする可能性があった。

 このため、今後は「起訴状によると〜としている」「〜とされる」といった書き方に改め、あくまでも検察側の主張であることを示す。同様の理由で「起訴事実」という表記は「起訴内容」とした。

◆双方の主張のバランスに配慮する

 これまでの裁判報道では、裁判が始まったばかりなのに、検察側の冒頭陳述の内容を確定した事実であるかのように報じることがしばしばあった。今後は、検察側の冒頭陳述や論告を検察側の主張にすぎないことを明確にし、「主張した」「指摘した」といった表現にとどめる。弁護側の冒頭陳述や最終弁論についても相応に報じ、双方のバランスに配慮する。

◆見出しで予断を与えないようにする 

 「見出し読者」という言葉があるように、見出しの影響力は大きい。記事が配慮の行き届いたものであったとしても、見出しが配慮に欠ければ、意味がなくなってしまう。

 ガイドラインは、見出しについても「情報の出所明示」など、なるべく原稿と同じ原則を適用。見出しにより、予断や偏見が生じないよう戒めている。

◆写真でも不当におとしめない

 記事と同様に、写真や写真説明でも、容疑者を不当におとしめないようにする。

 容疑者の写真を掲載する場合は、あえてふてぶてしく見えるような写真を選んだりしない。

◆誠意もって被害者に取材 

 被害者側の取材は、事件の本質に迫るためにも、捜査当局の情報を検証する意味でも重要だと考える。

 一方で、事件で苦しむ被害者・遺族を傷つける「二次被害」は絶対に起こしてはならない。報道の自由を振りかざすのではなく、被害者側の心情に配慮して、誠意を持って取材に当たる。

 被害者側が参加した裁判などで、被害者らが被告に感情的な言葉をぶつける場合があるが、記事にする際は、被告を不当におとしめないようにする。

 

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