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【社会】

TXでドア挟み事故多発 ホームドアと車両の間が死角に

 東京・秋葉原と茨城県を結ぶつくばエクスプレス(TX)で、列車のドアに乗客の所持品や体の一部を挟んだまま走行する事故が続発している。昨年度は22件あり、うち4件で物が列車外の構造物にぶつかり破損した。ホームドアと車両の間のスペースが死角になって安全確認ができず、異物を検知するセンサーの稼働範囲も狭いという構造的な欠陥がある。 (皆川剛)

 昨年九月、北千住駅(東京都足立区)で、バスケットボールなどの入った巾着袋をドアの外に残したまま袋のひもを挟んだ状態で列車が発車した。袋は四・五キロ先の通過駅で時速九十五キロでホームドアに衝突し、ボールなどがホーム下に散乱した。今年二月には、流山おおたかの森駅(千葉県流山市)で、母親に抱かれた一歳三カ月の女児が、手のひらを挟まれ、列車はそのまま約五百メートル走行した。

 TXは車掌のいないワンマン運行。運転士は発車前、ホームを撮影する三台の天井カメラの映像を前方のモニターで見て安全を確かめるが、高さ一・三メートルで不透明なホームドアの線路側はカメラの死角になり見えない。

 ホームドアの開閉部付近には四十センチと九十センチの高さに人や物を検知して列車を止めるセンサーを備える。車両にも厚さ一・三センチ以上のものをドアが挟むと検知するセンサーがあるが、北千住や流山おおたかの森の事故では反応せず、ほかにかばん(十一件)、傘(四件)などを挟んだまま発車するトラブルがあった。本年度も二件起きており、いずれも乗客のかばんを挟んだ。

 二本の線で異物を捉える一次元センサーでは事故を防げていないことを受け、TXを運行する首都圏新都市鉄道は昨年六月の社内会議で、空間全体で反応する三次元センサーの設置について議論した。しかし、十億円以上の費用が掛かることを理由に見送られた。

 同社は取材に「小さな物体にはホームドアのセンサーが届かない場合がある。車両ドアは扉の上部で厚みを測定するため、挟まれた位置によっては反応しない。問題意識はあり、新型センサーの実証実験など、改善のための技術的な検討を進める」と答えた。

 TXと同じく全駅にホームドアを備え、六両編成のワンマンで運転士が発車時の安全確認を担う東京メトロ丸ノ内線では昨年度、同様の事故は、銀座駅で傘を挟んだまま発車した一件のみとしている。同線では、二十八駅中二十一駅で三次元センサーを導入。事故があった銀座駅を含め、七駅が未設置だが、本年度中に三次元センサーを設置する。

◆新センサー予算ネック 人員態勢も限界

 つくばエクスプレス(TX)のドア挟み事故多発に絡み、TXを運行する首都圏新都市鉄道が、昨年六月に対策を協議した社内会議の議事録を本紙は入手した。

 国土交通省OBの柚木(ゆのき)浩一社長以下、安全を担当する全幹部が出席。事故の多発が議題となり、三次元センサーを全駅に設置した場合の総額を役員が尋ねた。「十二億円から十三億円かかる」と技術部門が回答。役員は「莫大(ばくだい)な投資になることから、安易なハード対策に頼らず、ソフト対策の効果を徹底的に検証するように」と指示した。

 この会議を受け、同社は昨年九月から、駅員が列車とホームドアの間の死角をのぞき込み、安全を確認する対策を始めた。しかし、駅員がホームに必ずいるのは朝夕のラッシュ時各二時間のみで、一部の混雑駅にとどまる。また仮に駅員が異変に気付いても、列車非常停止ボタンがホームに備えられていない。結果、事故は食い止められていない。

 センサーには、ホームドアと列車の間に人が取り残されたまま発車するのを防ぐ役割もある。鉄道の安全に詳しい関西大の安部誠治教授は「特に体の小さな子どもが一人で乗車する場合に、今のTXの設備や運用では安全を担保できない」と指摘。十三億円は同社の一年間の安全投資額に匹敵することから「一斉更新は難しくても、五年計画など段階的に交換していくべきだ」と話す。

<つくばエクスプレス> 2005年開業。秋葉原−つくば間58・3キロを20駅でつなぐ。1日あたり平均輸送人員は34万人。運行する「首都圏新都市鉄道」(東京都千代田区)には沿線自治体を中心に189団体が出資。茨城県と東京都が各約18%の株を持つ。昨年、国土交通省の審議会は秋葉原から東京駅への延伸を「意義がある」として国に検討するよう求めた。

(東京新聞)

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