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【社会】

「15メートル津波08年に認識」検察役 「長期予測信頼性ない」弁護側 福島事故 東電元会長ら無罪主張

 二〇一一年の東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長(77)ら旧経営陣の三被告の初公判は三十日午後も東京地裁(永渕健一裁判長)で続いた。検察官役の指定弁護士は「事故の三年前、長期予測に基づき、東電は高さ一五・七メートルの津波の試算を得ながら対策をしなかった」と主張。弁護側は「予測に信頼性はない」とし、津波は予測できなかったと反論した。

 永渕裁判長は「事案の専門性や複雑性から、全体の審理計画を策定するには時間を要する」と述べ、公判は長期化する見通し。

 指定弁護士は冒頭陳述で、東電は二〇〇八年三月、国の地震調査研究推進本部(推本)の長期予測に基づき、福島第一に最大で高さ一五・七メートルの津波が押し寄せるとの試算結果を得て、敷地東側全面を囲う海抜二〇メートルの防潮堤や、沖合の防潮堤の建設を検討していたことを明らかにした。

 さらに、三人が出席した〇九年の会議で、当時原子力設備管理部長だった吉田昌郎(まさお)・元福島第一原発所長=一三年死去=が「一四メートル程度の津波が来ると言っている人がいる」と発言したことも示し、遅くともこれ以降は津波対策を取るべきだったと指摘。「三人が費用と労力を惜しまず、義務と責任を果たしていれば事故は起きなかった」と結論付けた。

 一方、弁護側は冒頭陳述で「(一四メートルは)疑問視される意見として述べられていた。発言を聞いたからといって津波を予見できたとは言えない」と反論。また一九六六年に福島第一が設置許可されて以降、国の安全設計指針に基づき「安全性は確保されていると評価されてきた」と反論した。

 他の被告は、武黒一郎(71)、武藤栄(67)の両元副社長。福島原発告訴団が一二年、勝俣元会長らを告訴・告発。東京地検は二度、不起訴処分としたが、検察審査会が三人を起訴すべきだと議決し、一六年、指定弁護士が強制起訴した。次回期日は未定。

◆「想定外」繰り返さぬ機会 原発取材班キャップ・山川剛史

 福島原発事故の発生当初から取材を担当する中で、久しぶりに東京電力の元経営陣たちが「予測できなかった」「想定外」のせりふを繰り返すのを聞いた。

 だが、東電は何度も自らの原発で、非常用発電機や分電盤などがある建屋地下への浸水事故を起こしている。安全対策の担当幹部だった故・吉田昌郎(まさお)元福島第一所長は「あれでものすごく水の怖さが分かった」と語っているが、東電は具体的な対策を講じていない。

 傍聴しながら、その事実を思い出した。もし東電が原発の巨大リスクを十分認識し、電源設備の移設、防水、多重化のいずれかの対策を講じていれば、たとえ「想定外」の大津波に襲われようと、福島の原発事故は起きなかったか、事故の規模が違ったはずだ。

 政府や国会の事故調査委員会は、事故原因を解明しないまま活動を終了。福島第一事故は収束にはいまだ遠く、数多くの被害住民は生活を取り戻せないでいる。政府や電力各社は、住民避難や核のごみの問題を解決せずに、各地で原発再稼働に突き進んでいる。

 そんな今、東電公判は、単に元幹部三人が有罪かどうかを争うだけでなく、大きな自然リスクにさらされる日本で二度と「想定外」を繰り返さない重要な機会となる。

(東京新聞)

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