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【社会】

被災地 災害公営住宅の家賃増へ 生活再建 また厳しく

 東日本大震災の被災者が暮らす災害公営住宅で二〇一八年度以降、家賃の実質値上げが相次ぐ見通しだ。低所得者を対象とした国の家賃補助が段階的に縮小することが要因。岩手、宮城、福島三県の入居世帯の約七割に当たる一万六千世帯超に影響する恐れがあり、三県は国に見直しを求めている。十一日で大震災発生から六年半。

 災害公営住宅を管理する県や市町村が、補助縮小を十分に周知していないケースもあり、今後、各地で家賃を巡り混乱が起きる可能性がある。

 国の家賃補助は「東日本大震災特別家賃低減事業」。補助額は家賃や世帯月収によって異なるが、どの世帯も入居六年目以降は段階的に縮小し、十一年目にゼロになる。災害公営住宅への入居は一三年度から本格化しており、丸五年が経過する一八年度以降、入居六年目を迎える被災者が年々増えていく。

 「東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター」(仙台市青葉区)の試算では、国民年金以外に収入がなく、間取り2Kの部屋に住む同市の被災者の場合、入居一〜五年目の家賃は月五千六百円で、補助がなくなる十一年目以降は三倍超の一万八千二百円になる。

 補助の対象は原則、家族構成により一定額を控除した世帯月収が、八万円以下の入居者。三県によると七月末時点で補助を受ける世帯数は、岩手が三千三百二十一、宮城が九千二百七十二、福島が四千百一で、計一万六千六百九十四世帯。独自の家賃支援制度を持つ自治体の被災者は、国の補助が減っても負担が増えない場合がある。

 三県は「被災者の厳しい状況に寄り添ってほしい」と、国に補助額の据え置きなどを要望。しかし復興庁は「災害公営住宅は整備費の補助などで手厚く支援している。家賃減免は自治体独自で可能だ」として、否定的な考えを示している。

◆年金受給者「これ以上何を削れば…」

 東日本大震災の被災地に整備された災害公営住宅の入居者には、年金を受給しながら生活するお年寄りも多い。「今でも生活は厳しいのに、これ以上何を削ればいいのか」。仙台市では、家賃の引き上げ中止などを市に求める署名活動が始まっている。

 震災で自宅のアパートが全壊し、仙台市内の災害公営住宅に一人で暮らす無職佐藤俊治(さとうとしじ)さん(67)は今年三月、市から送られてきた文書を見てショックを受けた。入居六年目の二〇一九年四月から家賃が段階的に引き上げられることを初めて知ったためだ。

 震災時はタクシーの運転手だった。発生直後から乗客を乗せて被災地に向かい、何度も惨状を目にする中で、心のバランスを崩し、仕事を辞めざるを得なくなった。

 通院を続けながら、年金に頼る生活を送る。節約のために好きだった酒やたばこもやめて食費も削るが、約一万一千円の家賃や医療費、光熱費を支払うと、手元にはほとんど残らないという。

 災害公営住宅の自治会長らと一緒になり、今年五月から署名活動を開始。七月には約二千人分を提出した。「国や市は、もう少し被災者のために心を砕いてほしい」。佐藤さんの願いは切実だ。

<災害公営住宅> 地震や津波などの災害で自宅を失い、自力で再建できない被災者のため、都道府県や市町村が整備する賃貸物件。高齢者や所得の低い世帯が入居するケースが多い。集合住宅と一戸建てがある。応急仮設住宅が無料なのに対し、入居者の収入や間取りによって家賃が決まり、数千〜数万円が一般的。岩手、宮城、福島の被災3県では、約3万戸の建設を予定しており、7月末時点で86.7%が完成した。

仙台市の災害公営住宅で、現状について語る佐藤俊治さん=10日

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