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【社会】

電通社長、違法残業認める 高橋さん遺族に謝罪

 広告大手電通(東京)の違法残業事件で、労働基準法違反罪に問われた法人としての電通の初公判が二十二日、東京簡裁(菊地努裁判官)で開かれた。山本敏博社長は「間違いありません」と起訴内容を認め、「事件を引き起こして深く反省している」と謝罪した。検察側は罰金五十万円を求刑し、即日結審した。判決は十月六日。 

 新入社員高橋まつりさん=当時(24)=の過労自殺が労災と認定されてから一年。事件は働き方を問う社会的議論に発展した。違法残業事件は略式起訴で済まされることが多く公の法廷で審理されるのは異例だ。

 検察側は、二〇一五年の時点で月百人以上の社員が違法な残業をしていたと指摘。その後も会社が業務の改善を進めないまま、労働時間の短縮を求めたため「社員はサービス残業を余儀なくされた」とし、今回の事件を「氷山の一角」と指摘した。

 弁護側の被告人質問で、山本社長は「(事件より前に)是正勧告を複数回受けていたのに、根本的な解決を図ることができなかった。改革を進め、このようなことを二度と繰り返さないことが私の最大の責務だと思っている」と説明。その上で「特に高橋まつりさんの尊い命を失ってしまったことの責任は重大で、ご本人、ご遺族に改めておわびします」と述べた。

 起訴状によると、高橋さんの上司ら三人が従業員四人に一カ月最大十九時間超の違法な残業をさせたとされ、公判では法人としての責任が問われた。

 検察は七月、本社の幹部三人と、支社の幹部三人を起訴猶予とする一方、電通を略式起訴し、公開の法廷で審理せず罰金刑を出すよう簡裁に求めた。これに対して簡裁は、略式起訴は「不相当」と判断、公開の法廷で審理することを決めた。

◆「働き方」に法規制不可欠

 裁判所が企業を被告として公の法廷で裁く、電通の違法残業事件の公判が結審した。大阪でも今年、同様の事件で法廷を開いたケースが二件相次いだ。労働問題に詳しい佐々木亮弁護士は「(略式起訴だけでは)企業にとってスピード違反の反則金のようなもので、抑止力は低かった」と指摘。企業経営者は被告企業の代表として自ら刑事裁判に出廷するリスクを抱えるようになっている。

 山本敏博社長は初公判で「今までは仕事に時間をかけることが品質向上につながると思い込んでいたが、社員の心身の健康を維持することが品質向上につながるとの考えに立って改革を進める」と約束した。

 「働き方改革」を巡っては電通事件を契機に、社会的に議論が加速した。政府は事実上、青天井となっている残業時間に上限規制を設ける法改正などを検討したが、衆院の解散・総選挙によって関連法案の国会提出が来年に先送りされる公算が大きくなっている。

 高橋まつりさんの悲劇を繰り返さないためには、企業努力に頼るのではなく、法規制が求められる。公判で得られた教訓を、どう法改正に生かしていくかが問われている。 (岡本太)

<電通の違法残業事件> 2015年4月に入社した高橋まつりさん=当時(24)=が同年12月に東京都内で自殺。三田労働基準監督署は16年9月、長時間労働が原因だったとして労災認定した。厚生労働省が今年4月までに法人としての電通と、高橋さんの上司を含む本支社幹部らを書類送検。検察は7月、高橋さんら従業員計4人に違法残業をさせたとして、電通を略式起訴し、幹部6人を不起訴処分とした。

(東京新聞)

頭を下げる電通の山本敏博社長=22日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで(淡路久喜撮影)

頭を下げる電通の山本敏博社長=22日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで(淡路久喜撮影)
 

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