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【社会】

「やっとこ」復活 相馬の青ノリ漁 震災から7年、大きな一歩

 福島県相馬市の松川浦で、東日本大震災から七年ぶりに特産の青ノリ漁が再開され、浜が活気づいている。東京電力福島第一原発事故の影響で出荷を自粛してきたが、放射性物質の検査で安全性が確保できると判断した。生産量はまだ少ないが、「やっとこ(ようやく)だ」と漁師たち。完全復活に向けて大きな一歩を踏み出した。 (山本哲正)

 三月下旬の早朝、小舟に乗った漁師の山下博行さん(64)が、海面から十センチほど下のノリ棚から吸引器でノリをすくい取った。近くには松の生えた小島が浮かぶ。「昔から、この景観を眺めながらやってきた。震災でなくなった島もあるが、代表的な島は残った。やっぱり気持ちいいね」

 現在、生産者は相馬双葉漁協の約七十軒。二月上旬に再開された漁は四月末まで続き、十〜二十トンの収穫を見込む。

 松川浦は、砂が堆積した砂州(さす)で外海と隔てられた潟湖(せきこ)で、穏やかな湾内は青ノリの養殖に適している。震災前はノリ棚約二万四千基が並ぶ東日本有数の産地だった。毎年二〜四月のシーズン中、生ノリを中心に二百トン以上が出荷されていた。

 それが大震災の津波で大きな被害を受けた。漁協職員だった岡村祐一さん(62)は「ノリ棚も舟も押し流され、粉々になった」と振り返る。漁師も二人亡くなった。多くが避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされた。

 山下さんらは「伝統的なノリを絶やしちゃいかん」と、ダイバーらの協力を得てガレキを除去。流失した青ノリの種は、愛知県の同業者などから提供を受けて増殖した。

 青ノリの放射性セシウム濃度は多くても一キロ当たり四七ベクレル(二〇一二年二月)で、国の基準値(一キロ当たり一〇〇ベクレル)を常に下回っていた。それでも出荷に時間がかかったのは「風評被害対策に、完全な安心安全を求めたかった」(山下さん)。

 昨年から検出限界値(同五・五〜九・三ベクレル)を超えたことがなく、昨年十一月の県内漁協の組合長会議で再開を決定。まずは最盛期の十分の一の約二千六百基のノリ棚で漁を再スタートした。

 地元の旅館「晴風荘」は早速仕入れて生ノリの天ぷらやみそ汁で提供。おかみの坂本幸(みゆき)さん(51)は「ノリ好きのお客が多く、『待ってました』と喜んでくれる。私も待ってました」。

 山下さんは「検査を怠らずに風評を払拭(ふっしょく)し、早く震災前の状態にしたい。全国の人たちに食べてもらいたくて、漁師は皆頑張っている」と話している。

(東京新聞)

早朝、赤く染まった松川浦。海から突き出た竹の柵には青ノリ漁の網が仕掛けられている

早朝、赤く染まった松川浦。海から突き出た竹の柵には青ノリ漁の網が仕掛けられている
 

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