神奈川

有権者への道(上) いきなり選挙って言われても

2016年6月9日

選挙について話し合う(左から)佐賀さん、斉藤二希子さん、斉藤渓さん=戸塚区で

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 明治学院大横浜キャンパス(横浜市戸塚区)に近いJR戸塚駅前。参院選から投票できるようになる十九歳の二年生三人が、選挙を話題に話し合っていた。

 「小さい頃は何で投票に行かない人が多いんだろうって思った。でも当事者になってみると、どうしていいか分からない」と斉藤二希子(ふきこ)さん(19)=港南区。日本国憲法を題材にした演劇に出演するなど社会問題への関心は高いが、それと政治がつながってこない。

 斉藤渓(けい)さん(19)=静岡県沼津市=は授業で選挙制度を学んでいるが、「いきなり投票しろと言われても…」と腕組みする。佐賀杏(あんぬ)さん(19)=中区=も、「選挙に行かないのも理解できる」と応じた。三人とも、自分たちが政治に関わることに現実感がわかない。

 背景には、「世の中について知らないことが多いから」(佐賀さん)だけでなく、公約が実現しないなど「浮世離れした」政治への不信感があるという。「一億総活躍」と言いながら拡大する経済格差、憲法違反を指摘されながら「ずる賢い方法で」成立させた安全保障関連法、相次ぐ政治と金の問題−。二希子さんは「『どうせ投票しても』っていう失望もある」と、ため息をつく。

 佐賀さんは「十代で選挙権が欲しいとは、あまり思っていなかった」が、権利を得たからには「ちゃんと調べてから投票したい」との思いもある。他の二人も同じ考えで、渓さんは「現状を知れば、投票に行きたくなる」と自らに言い聞かせた。

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 お茶の水女子大二年の向鶴(むかいづる)綾菜さん(19)=秦野市=も、「本当に私が投票していいのか。中途半端な気持ちで投票して、政治に反映されていいのか」と悩む。成人年齢は二十歳のまま変わっていない。「大人になる意識が身につかない中で、選挙の年齢だけ下げても当事者意識がわかないのでは」

 それでも、自分の目で候補者を見極めて票を投じるつもりだ。学内の勉強会に所属し、国内外の社会問題を学ぶ。「国が進める『女性活躍』のやり方には、違和感を覚える」「政策が子育て世代か高齢者向けに二極化していて、私の年代がうれしくなるものがない」「首相や大臣を直接選べないから、社会的課題への関心と政治がリンクしないのでは」。次々に疑問や注文が浮かぶ。

 答えはすぐには出ないが、「判断材料になる」。選挙の意義や歴史、候補者の主張を自分なりに調べ、「流されることなく選びたい」と語った。

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 七月の参院選から、選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられる。神奈川でも、当事者たちは獲得した権利に戸惑いや期待を感じながら、「有権者への道」を進んでいる。投開票日まで一カ月余り。彼らの心の動きを追った。 (志村彰太)

 <18歳選挙権> 2014年施行の改正国民投票法で、憲法を変える際の国民投票は、18年6月から18歳以上が投票できると定められた。これに合わせ、選挙権年齢の引き下げも超党派で検討が始まり、昨年6月に改正公職選挙法が成立。選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられ、今夏の参院選で初めて適用される。これまで20歳未満には認められていなかった候補者の支援などの選挙運動も、18歳からできるようになった。ただ、民法などで定める成人年齢は20歳以上のままで、今後の検討課題になっている。

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