10代からの社会保障

<ロングインタビュー> 【介護】結城康博・淑徳大教授

2016年6月22日

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◆「『世代間闘争』を一票から始めよう」

◆今の若者の50代“暗くなる危険”

 大学では福祉人材を育てています。ゼミ生では毎年5、6人が介護士として現場として立っている。若者には今の介護人材不足が続けば、親の老後と密接に関係するということを考えて政治に参加してほしい。18、19歳の親はいま45歳〜50歳くらい。20〜30年後に70歳を超えて後期高齢者になる。若者は40〜50歳になっている。そのときのためにいまからちゃんと介護人材対策をしておかないと、非常に厳しい時代になります。いま18歳だから親はぴんぴんしている。介護人材不足と言ってもおじいちゃんおばあちゃんの話を思うかもしれない。遠い将来だと思うだろうが、いまでも人材不足なのだから20、30年後は全くいなくなってしまう。

 これが長期的な見方ですが、自分の祖父母の4、5年先の話も自分にかかわってきます。いま70代とかが多いと思いますが、5年くらいたつと要介護になる確率が高い。そうすると、医療介護が必要になると、祖父母が単独で対応できる人もいれば、自分の両親が経済的援助をしないといけない家庭もあるかもしれない。親が仕事をやめて祖父母の介護をやらざるをえないかもしれない。いま祖父母が倒れたら。親は祖父母のために仕送りしないといけないかもしれない。そうなると、自分の大学費用はどうなるかという問題だって出てきます。長期的、短期的、2つの視点で介護問題を見据えてほしいなと思います。

 いまの高齢社会を支えている層は1971〜74年生まれの団塊ジュニア世代。今40代前半の人々です。この層が75歳になったときに、支える人数は本当にいなくなる。若者の40代、50代は自分の親の世代の団塊ジュニアを支えるために税金も保険料もすべてそこに注ぎ込まないといけない社会になっています。いまの仕組みや社会保障、介護施策を若いほど人口が少なくなる逆三角形に合わせた形に変えていかなければいけない。そのために18歳から介護問題に関心を持ってもらいたい。働き盛りの50代は暗く終わっている社会にしないために。18歳から早く政治に参加して関心を持って、年を取るほど人口が少なくなる、既存の人口構造を前提とした社会から、大変革させるのが若者の宿命でもあります。

◆高齢世代間で助け合いを

 解決策として上げられるのは何か。今の社会保障制度と介護制度は、基本的には65歳未満の現役世代が、65歳以上を支える仕組みになっています。でも、65歳以上と言っても持っている人と持っていない人の格差が激しい。年を取れば取るほど、格差が広がっています。貯蓄、所得、年金額も。65歳未満が65歳以上支える仕組みを堅持しながら、今後の介護施策は同じ世代の人、世代内扶養というが、持っている高齢者が持っていない高齢者を支える仕組みに変えていかないと、今の若者が全責任を負わなければならなくなる。実は、団塊ジュニア世代にも格差が出ている。自分の親を見てほしい。年収1000万円の親もいれば、そうではない親もいる。奨学金を借りている生徒は卒業後、毎月返済しないといけない。逆に、借りなくても全額、親が出せる家庭もある。親が75歳以上になると、さらに格差が広がる。持っている高齢者が持っていない高齢者を支える社会にしないと、永遠に現役世代がじり貧になる。大変革を欲して発しないと、真っ暗闇になる。若者が発しないと。

 社会を動かしている人、リーダーと言われる人はだいたい、50〜70代です。各界のリーダーは勝ち組。政治家だけでなく、社会のリーダーとなり得る人らは自分に不利になるようなことはしたくない。自分の資産も持っておきたい。同世代を助け合うのはしたくない。社会の仕組みを作るのがこの人たち。黙っていると今の仕組みは変わりません。若者には「世代間闘争」をやってほしい。ターゲットは、高齢者全体ではなく持っている高齢者。高齢者からは「努力した結果、負けた奴が悪い」という反論があるでしょう。でもそれはたまたま勝っただけで運もある。育った環境かもしれない。世代間闘争のきっかけになるのが選挙に行くこと。いまから言い続けないと、仕組みをあらたに作るのは時間がかかります。

 1人で暮らしているような祖父母が幸せに生きていくために、自分の親が介護離職する可能性がある。介護施策を大事しないといけない。介護は、社会保障費ばかり食って、というお荷物的な発想がある。そういう発想じゃなく、介護は投資、公共事業だと思ってほしい。介護政策が充実することによって自分の親は、祖父母の介護の心配がなくなり、共働きができます。そうすると、大学費用も心配なくなる。介護人材の給与を上げることは、介護サービスが保証される。人材への投資は、労働環境がよくなり、経済成長につながる。安倍政権もそういう論理でやっているはずなんだけど、あんまりそうなっていません。新しい公共事業はがまんして、人にお金を付けてほしい。新幹線はいらない。メンテナンスは必要だが、新しいインフラはいらない。これ以上便利を要求するより、介護で安心して働ける社会にする。そうすれば内需も拡大するんじゃないでしょうか。

<結城康博(ゆうき・やすひろ)> 淑徳大教授。専門は社会保障。1969年生まれ。著書に「介護 現場からの検証」「孤独死のリアル」など。

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