10代からの社会保障

<10代が投票すべき5つの理由>(1)奨学金

2016年6月5日

廣野真紀子さん(19)

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 「十八歳選挙権」が実現する参院選が近づいている。世論調査で十代有権者たちの関心が高い政策は社会保障。経済成長の見通しも不透明で、人口も減っていく。そんな誰もが未体験の社会で「安全網」はどうあるべきか。一票は、その針路を決めていく出発点ともなる。中央大学の学生サークル「Vote at Chuo!!」の一、二年生の声を聞きながら、研究者らとともに社会保障や雇用を考えた。

 まずは、現在、学生の三人に一人が利用している奨学金について学生たちに話を聞いた。

 広島県尾道市出身の一年、高橋幸暉さん(19)は無利子の奨学金を借りている。卒業後、四百万円を返済する。「地方では経済のピークが過ぎている。自分が六十年ぐらい後に老後を迎える時を考えたら、地方では福祉に期待できない」。奨学金は、東京に拠点を築くための投資と位置付けている。「就職に失敗して返せなくなったらどうしようという不安はあるけど…」

 二年で熊本県出身の廣野真紀子さん(19)は「地方出身だと一人暮らしにお金がかかるから、首都圏の人より奨学金借りる人は多いのかなあって。そういう差がつくのは何かおかしい気がする」と首をひねる。

 廣野さんが懸念する地方と都市の「格差」。二〇〇八年のリーマン・ショック後、東京の有名大学への首都圏以外の地方からの志願者数は減少傾向が続く。

 本来、親の収入を含めたさまざまな教育格差を縮めるために奨学金がある。しかし今は返済時の負担感の重さが、その後の人生に重くのしかかる。非正規雇用の増加や、親の収入の減少、学費の上昇など上の世代とは違う事情も抱える。

大内裕和・中京大教授

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 奨学金の開始は戦時中の一九四三年にさかのぼる。給付としなかった理由は、事業を行った大日本育英会が「わが国においては子女の教育の責任は親または家にありとする家族制度を支持する立場」だったためだ。当初は無利子のみだったが八四年の法改正で有利子が加わり、現在奨学金事業費の七割を占める。

 投票先を決めるにあたり、政治ができる解決策は何か。大内裕和中京大教授は「日本の高等教育予算のGDP比は先進国平均の半分。大学への予算を倍増すればほぼ解決すると思っている。授業料無償化は三兆円あればできる」。

 子どもの貧困問題に取り組むNPO法人「キッズドア」は大型の給付型奨学金の創設を求め署名活動を実施。財源を休眠預金(十年取引がない預金)に求めることを提案した。毎年、約一千億円が銀行の雑収入になっているという。

 奨学金が返済困難となっている学生の支援に取り組む岩重佳治弁護士は「今の若い人たちは助けを求めるのが非常に下手」と心配する。構造改革の名のもと競争原理が拡大する社会で育ち「一人で頑張らなくては」という価値観が強いという。奨学金問題を「若い人たち同士がつながって声を上げるきっかけになれば」と願う。(小川慎一、山田祐一郎、大平樹が担当します)

<「Vote at Chuo!!」(ボート・アット・チュウオウ)> 2015年4月、中央大の学生が、東京都八王子市の多摩キャンパス内に投票所設置を求めて活動を始めたサークル。政治を若者の身近なものにすることを目指して、約40人のメンバーが高校生向けの主権者教育や投票の呼び掛けなどに取り組んでいる。

主な政党の公約

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