10代からの社会保障

<5つの現場>(3)保育 受け皿 幼稚園も限界

2016年6月26日

預かり保育をする幼稚園。利用者の多くは母親がフルタイムで働く家庭だ=東京都足立区で

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 「お絵描きしたの。見てよ」「おもちゃで遊ぼう」−。東京都足立区の私立幼稚園では、夕方になっても園児の声が絶えない。約三百六十人の園児のうち、毎日七十人ほどが最長午後六時半までの預かり保育を利用する。多くは母親がフルタイムで働く家庭だ。

 厚生労働省が公表する待機児童数は、二〇一五年四月時点で二万三千人余。潜在的な待機児童数はさらに約六万人いると推計される。受け皿拡大を目指す国は今年四月、幼稚園に対しても空き教室などで積極的に待機児童を受け入れるよう異例の要請をした。

 「都内の待機児童がいる地域では子どもの数が多く、幼稚園にも空き教室はない」。足立区の園の理事長(68)が話す。預かり保育を増やしたくても職員が集まらない。本年度の募集に応募はゼロ。「こんなことは初めて」。人材難にあえぐのは保育所だけではない。

 この園は〇六年、保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」となったが、一五年四月の子ども・子育て支援新制度への移行前に認定を返上した。幼稚園は文部科学省所管の教育機関として自治体から私学助成が出る。しかし新制度ではそれがなくなり、定員が多い大規模施設ほど児童一人当たりの補助額が減る。この園は試算すると、年約二千五百万円の減収となった。「補助を減らしてまでやりたい話ではない」

 認定こども園制度は〇六年にスタート。保育所を所管する厚労省と文科省の二重行政という批判もあり、新制度では、内閣府が一括で所管して補助金も出すなど手続きを簡素化した。

 一四年度に千三百六十カ所だった設置数は、一五年度には二千八百三十六カ所に倍増したが、都内では認定返上が相次いだ。内閣府が大規模施設の大幅減収を想定しきれていなかったためだ。

 幼稚園と保育所の「二本立て」は戦前から続く。幼稚園行政を担当したことのある文科省官僚は「分かれていた期間が長すぎる」と漏らす。大規模施設への加算はその後増やされたが、互いが別の施設としてプライドを持っていることも含め、両者の溝が埋まるのかは不透明だ。

 そんな官庁街・霞が関の事情とは関わりなく、子どもは育ち続ける。足立区のアルバイト両坂(りょうさか)薫さん(32)は、二月に長男新(あらた)ちゃん(1つ)の認可保育所の入所不承諾通知を受け取った。「十数人の募集に九十人が申し込んでいたと知った瞬間、どっと疲れが出た」。区の待機児童は三年連続で三百人を超えた。

 なんとか近くの都の認証保育所に入れることができたが、保育時間が短く、九年間勤めた会社を辞めた。認定こども園の存在はよく知らず、選択肢に入れたことはなかった。「宣伝不足だし、幼稚園と保育所は質も違う。母親目線で施策を」。一方で保活に疲れた母はこうも思う。「保育所のために地方に住みたくなる施策も必要なのでは」 (山田祐一郎)

 <認定こども園> 家庭環境の変化への対応や待機児童解消などを目的に2006年に始まった。保護者の就労に関係なく子どもを預けることができる、幼稚園と保育所の機能を併せ持った施設。当初は幼稚園部分が文部科学省、保育所部分が厚生労働省の指導監督を受け、補助金も私学助成と保育所運営費と分かれていたが、15年4月の「子ども・子育て支援新制度」移行後は内閣府が一括して所管し、補助金も「施設型給付」に一本化された。

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