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千葉ニュース

安倍政権を問う(中)憲法・安全保障 「9条 語りづらくなる」

 改憲を推進する安倍政権の下、平和憲法が語りづらくなっている。全国各地で自治体が「政治的中立」を理由に憲法関連の市民集会やイベントの後援・共催の自主規制を強める中、市川市で護憲活動をしている市民サークルが、公民館で一緒に活動する他のサークルから同様の理由で秋の文化祭への参加を断られた。専門家は市民の間にまで「萎縮」の動きが広がることを懸念している。

 「政治活動を目的としたサークルの出展はこれまでなかった」

 市川市の「みなみ市川九条の会」に九月、市川駅南公民館(市川市大洲)の文化祭の主催者団体から「出展拒否」の文書が届いた。

 主催団体は、公民館で活動する約八十のサークル代表者らでつくる「市川市ミーティアム駅南連絡協議会」。文化祭は十月四、五両日に開かれた。

 協議会は今年夏、これまで文化祭に参加したことがなかった九条の会に参加を呼び掛けた。ところが九月に一転「参加は認めない」と通知した。

 協議会はその理由について、九条の会を「一定の政治的主張を宣伝する団体」と定義。「この目的に沿った出展は他の展示作品となじまず、異質であるばかりか、来場者との緊張関係もつくり出す」と指摘した。

 協議会のある役員は「文化祭はみんなでワイワイやる祭り。(九条の会と)政治的立場が異なる来場者と、口論などのトラブルが起きるのを避けたかった」と明かす。

 九条の会事務局代表の高野邦夫さん(76)は「九条の会、というだけで拒否された。不合理で納得できない」と協議会の対応を批判。「平和を守る運動は、すべての文化活動の土台。万が一緊張関係が起きても、穏やかに話し合うのが民主主義の望ましい在り方ではないのか」と話している。

 名古屋大大学院教育発達科学研究科・教育学部の松田武雄教授(社会教育学)は「公民館で学習するサークルには、その成果を地域に向けて発表できる権利があり、排除する理由にはならない。協議会が政治状況を鑑みて自主規制したのではないか」と指摘する。

 この問題は、当事者が市民同士であり、自治体は直接は関係ない。しかし公民館での催しだけに、行政側の「事なかれ主義」も垣間見える。

 市川駅南公民館は、九条の会の抗議を協議会に伝える「仲立ち」はしたが、協議会の決定については「主催者が決めたこと」と口を挟まなかった。

 松田教授は「市民の自由な学習活動を支援するという公民館本来の役割からすると、公民館は両者の話し合いの場を設け、当事者同士が話し合いで解決できるようサポートするのが望ましかった」と指摘する。

 神戸学院大法科大学院の上脇博之(ひろし)教授(憲法学)は「完全な私的空間の催しなら、憲法で結社の自由、集会の自由が保障され、主催者が誰に参加を呼びかけるかは自由」とする。

 しかし「公民館は完全な私的空間ではなく、文化祭を主催する協議会は一定の公的視点が求められる」と強調。「実際起きるか分からない口論を理由に、特定のサークルを排除するのは過剰反応」とも語る。

 民間の自主規制の例として、高知市の土佐電気鉄道が一部の市民の批判を受け、今年の憲法記念日から、護憲をPRする路面電車の運行を中止したケースがある。

 上脇教授はこの例を引き合いに「純粋な公共ではないが、公共性も持つ企業まで自主規制を始めた。こうした流れは市民にも波及し、今後、公共空間で市民の発表の機会や場が奪われていくのではないか」と危ぐしている。

 九条の会の高野さんも「この公民館の例のような小さな事実が積み重なり、海外で戦争をできる国にするという流れが形作られていく」と懸念。「来月十日には特定秘密保護法も施行される。結果次第で今後四年間、さらに憲法や平和を語りづらくなる社会になるかもしれない。危機感をもって投票に臨みたい」 (服部利崇)

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