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【1997年4月 渡良瀬有情】

トラフズクの誕生

撮影・文 堀内洋助


 4月の渡良瀬遊水地は、ヨシの新芽に覆われ青々とした大湿地帯だ。洪水と足尾鉱毒対策を名目に谷中村を強制廃村して造られた広さ3300平方メートルのヨシ原は、現在、鳥類210種、植物680種が生息する野性の宝庫でもある。

 豊かな自然は生命をはぐくみ、トラフズクの繁殖は、4年前に関東地方で初めて渡良瀬遊水地で確認された。佐野市の柴田宗一さんがクワの木に営巣を発見。地元の探鳥家・寺内為敏さんと共に見守り六羽すべてが無事巣立ちした。昨年は7カ所で繁殖している。

 トラフズクは中形のフクロウで、体長約40センチ。成長は長い耳羽があり、北海道・東北・中部地方で繁殖、本州以南で越冬する。標高16メートルの湿地帯での子育ては極めて珍しい。遊水地の自然が豊かな証しである。

 夜行性のトラフズクは昼間はヒナと共にじっとしている。日没30分後に初めて親が巣を離れる。白い毛で覆われ愛らしいヒナに給餌のため、平均1時間に2回、ネズミやモグラを口にくわえてくる。日の出30分前に終了。しだいに羽は灰色や褐色に変わり、目は鋭く、すっかり猛禽の顔になっていく。巣立ちまで約3週間だ。営巣した頃の新芽は、新緑の葉に姿を変えて独立したヒナを隠してくれる。

 今年もトラフズクは営巣した。カラスの巣の約5メートルよこである。子育ては成功するだろうか。

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