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【1997年7月 渡良瀬有情】

サシバの森

撮影・文 堀内洋助


 「ピックィー、ピックィー」とサシバの声が、アシ原に響き渡る。ヤナギの枝に止まり、森に近づくものを威嚇する。食物連鎖の頂点に立つワシタカ類の中で一番よく鳴くタカだ。今年も東南アジアから繁殖に訪れた。

 “里山のタカ”で知られるサシバは、丘陵地や山地に生息する。だが、標高16メートルの渡良瀬遊水地でも、毎年3〜4ヶ所で営巣。低地のアシ原での繁殖は極めて珍しい。遊水地の豊かな自然環境が、餌になるネズミ・モグラ・ヘビ・カエルを生み、サシバを呼びよせる。

 サシバの巣は、ヤナギの木の地上5メートル付近にできる。低さでは日本新記録であろう。一般的にマツやモミの大木の地上10メートル以上なのだ。

 背丈以上に伸びたアシをかきわけて、サシバの森に入る。夏の日差しが遮られヒンヤリとし、壮快な気分だ。この森には4種の野鳥が繁殖。サシバの真下にキジ。20メートル横にオナガとモズ。サシバのおかげで天敵のヘビやカラスが寄り付かないからだろうか。自然界のドラマに感動を覚える。観察用のテントに入ってじっとしていると、まるで鳥の声がオーケストラのように聞こえてくる。

 今年の5月、遊水地で特殊鳥類のオオタカが繁殖し、三羽のヒナが巣立った。初の記録に、野鳥愛好家は大フィーバー。しかし、遊水地の野鳥を見守ってきた地元の探鳥家・寺内為敏さん(59)は、冷静に受け止め、「いままでほとんど野鳥が営巣しなかった人工林で繁殖した。オオタカが営巣できる豊かな森が、開発で失われているのではないかと心配だ。」と、話していた。野鳥の楽園である遊水地は、“かけこみ寺”になろうとしているのか。

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