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【1997年10月 渡良瀬有情】

秋の日々

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬川は、栃木県の足尾山塊から渡良瀬遊水地を経て利根川に注ぐ。延長108キロの川を、紅葉前線は10月上旬から一カ月かけて南下していく。

 ”秋の色”を求めて足尾山塊の社山(1826メートル)に登った。10日ごろから一週間が紅葉の見ごろ。中禅寺湖・八丁出島の車止めゲートから約一時間で阿世潟峠に到着。ここから尾根道で。右に中禅寺湖、左に足尾山塊(久蔵沢)の美しい紅葉風景のパノラマが続く。

 特に久蔵沢の紅葉は素晴らしい。後方に迫る松木沢の荒廃した岩肌が強烈なコントラストを描き出す。足尾銅山の煙害で森林を失った久蔵沢は、昭和32年に治山事業が本格的にスタート。40年の月日が森をよみがえらせ、美しい紅葉を見せてくれるまでになった。カエデの赤が多いのもうれしい。

 さらに尾根道を登る。突然、遠方の空に国の天然記念物・イヌワシが二羽現れた。交錯しながら飛んでいる。繁殖期のディスプレイ飛行だろうか。

 阿世潟峠から約2時間で社山に着く。山頂の下付近は煙害で立ち枯れた木々が紅葉の風景に異彩を放っていた。

 翌日、松木川で朝を迎える。ニホンジカの雄が雌を求めて水辺を走り回っている。夏毛の鹿子模様は冬毛の灰褐色に変わり、繁殖の季節なのだ。

 私は「秋の日々」の撮影で、紅葉前線と多くのドラマとともに南下していく。標高650メートルの足尾から120メートルの桐生まで、わたらせ渓谷鉄道に乗ると、秋の色の移ろいを目撃できる。そして、一気に渡良瀬遊水地の標高16メートルまで下ることになる。広大に群生するアシの白い穂が時間とともに色を染める。秋の空にミサゴ。チュウヒ、ノスリの猛禽類が舞う季節を迎えていた。

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