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【1998年1月 渡良瀬有情】

雪の世界

撮影・文 堀内洋助


 厳冬の世界を迎えた渡良瀬川源流の足尾町に向かう。暖冬のためか、山肌にうっすら雪が積もるだけだ。しかし山から吹いてくる風は非常に冷たい。

 松木沢で“氷の花”が咲いているのを見つける。足尾銅山が閉山して二十五年。今も残る足尾製錬所の給水管の割れ目から、水滴が落ちて見事な氷柱を造り、冬枯れのススキに付着して氷の彫刻を造形していた。思いがけない自然のプレゼントに感動する。

 立ち去りがたく、“氷の花”の近くに車を止めて一晩を明かすことにする。東の山からオリオン座が昇り、天の川が満天の星をたたえだした。気温はマイナス十度。星を撮影のカメラが霜で真っ白になった。

 「ヒューン、ヒューン」と、ニホンジカの甲高い声で朝を迎えた。数頭の群れがススキの中から顔を出し、じっと私を見ている。車から身を乗り出すと、水しぶきをあげて松木川を渡り、山に消えて行った。

 今月8日に2年ぶりの大雪が関東地方に降った。気象庁によると、1月の大雪は暖冬のあかしとのこと。雪の原因になる低気圧が日本付近を通過することが多くなるからだ。

 一面銀世界になった渡良瀬遊水地では、広大な枯野に点在するヤナギの木に”雪の花”が咲いた。ヨシ刈りの束が雪の綿帽子を造形し、凍った水辺に雪のパターンが描かれた。新川の岸に連なる小舟の雪化粧もフォトジェニックだ。また雪原を舞うチュウヒ、ノスリの猛禽類。雪解けの水溜まりで水浴びをするホウジロ類。越冬地に飛来した野鳥も雪の世界を演出してくれた。

 このように雪のある風景は魅力的だ。降り積もる雪は日常を覆い隠して、非日常へ導いてくれる。そこには驚きと感動の世界がある。

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