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【1998年6月 渡良瀬有情】

美しい水辺

撮影・文 堀内洋助


 今月2日、梅雨入りした。平年より1週間から10日ほど早め。梅雨は雪・台風と共に水の三大供給源といわれる。何故か私はこの時期の水辺を好む。水と自然の営みが美しい風景として現れるのだ。

 夜明け前の渡良瀬遊水地。薄明の水面にダイサギの白い影が揺れる。朝露をたっぷり付けたアシの葉でコヨシキリが盛んにさえずり、カッコウの声が響き渡る。6月の朝は、いつも荘厳である。

 ここには失われた日本の原風景が残っている。生命は水辺から誕生した。その遥か遠い記憶が、人間の脳裏に営々と伝えられ、故郷を感じるのだろうか。アシ原の水辺に立つと、いつもやすらぎを覚える。

 遊水地の水辺の美しさは、気象・環境・太陽によって変幻する。集中豪雨で冠水した大地に顔を出す樹々。アシで浄化されて澄みきった水。水面に描く朝夕の焼けた空の色。魚を捕るダイサギの一瞬の波紋。月明りに輝く湖面。このように水辺は様々な表情を見せてくれる。生命の源である水が描く一瞬の出会いを求めて歩くことは楽しい。

 今年も夏鳥として渡来したササゴイが、川の水面1メートル上のカワヤナギに営巣し、数個所のコロニーを作った。ササゴイは高い木に巣を作るといわれ、低木の営巣は珍しい。地元の探鳥家・寺内為敏さんは、ヒナを抱いたササゴイがチュウヒに襲われ、食べられるのを目撃。羽が無残に水面に散らばった。ヒナは枝伝いに逃げて難を逃れたが、翌日訪れると不在であった。食物連鎖の頂点に立つ猛禽類のチュウヒが見せた厳しい自然のドラマだ。

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