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【1998年10月 渡良瀬有情】

源流の森

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬川源流の松木沢は、異彩を放つ不思議な空間だ。足尾銅山の製錬所から出た亜硫酸ガスの煙害で、緑を失い荒涼とした山肌が続いている。はげ山から地球環境保護を訴える森の叫び声が、聞こえてくるようだ。岩壁に立ち枯れの木が、墓標のように立ち、朽ちた木の根が横たわる。保水力を失った山の斜面を数多くの滝が、豪快に滑り落ちる。魅惑的な風景が展開する。

 その景観は、日本のグランドキャニオンと称せられ、訪れた人の心を魅了する。足尾町は、松木沢の入り口の足尾ダム下に、銅(あかがね)親水公園を作り、「銅山の歴史と豊かな自然」をキャッチフレーズに観光で町おこしを進めている。ダムの展望台もビューポイントだ。

 秋の一日、松木沢を歩いた。林道で立派な角が生えたニホンジカの雄に遭遇。距離20メートル。じっと私を見つめて動かない。雌2頭が川岸に現れると雌を追って、山に登って行った。今は繁殖期なのだ。

 渓谷の青空に”雲の博物館”が出現。毛状雲、鉤状雲、霧状雲、レンズ雲、断片雲、肋骨雲、もつれ雲、放射状雲、積雲、飛行機雲などが、次々に現れては消えていった。圧巻は、午後3時ごろの彩雲。高積雲の縁が一瞬虹色に輝き、約1時間、繰り返し現れた。初めて見る壮大なドラマに感動。

 紅葉の時期を迎えた。今月中旬が見頃。中禅寺湖道路の終点、半月山駐車場(標高1595メートル)から望む足尾山塊の紅葉は素晴らしい。約40年間の緑化工事で森がよみがえった久蔵沢と、荒廃した岩肌の松木沢のコントラストに心を打たれる。渡良瀬川源流の皇海山(標高2144メートル)の勇姿も魅力的。また快晴の朝、運がよいと南西方向の尾根の紅葉越しに、約170キロ先の富士山を遠望できる。

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