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【1998年11月 渡良瀬有情】

豊かな川霧

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬遊水地を代表する風景は、早春と晩秋に見られる川霧の世界だ。アシ原と太陽と川霧が作り出す神秘的な一瞬のドラマである。

 今年の秋は川霧に異変が起きている。例年10月上旬から現われるが、アシ原を覆うような川霧は見られない。理由は朝の冷え込みが足りないからだ。

 地元の遊水地の自然を撮影する「写団藤岡」の写真家たちは、「霧が出ても上昇し、濃霧になってしまう。こんなに暖かな秋は珍しい」と話している。

 エルニーニョ現象による異常気象の長雨と温暖化が原因であろうか。東京湾では水温が下がらず、海苔の養殖の作柄が懸念されている。一年中見られる谷川岳一ノ倉沢の雪渓が完全に消えた。首都圏各地でサクラが開化したり、紅葉は2週間遅くて色づきも悪い。今秋はどこか変である。

 異変続きだが、11月の川霧に期待したい。暖かな日の翌朝、放射冷却で冷え込み、無風の時だ。アシ原はまるで雲海のようになり、微風で左右に動き、幻想的な世界が創造されていく。クライマックスは日の出前後。太陽の光線が黄、橙、赤と霧に色を染める。一瞬のドラマが展開される

 川霧を見る“お立ち台”は何カ所もあるが、有名な場所は、遊水地西側の旧谷中村合同慰霊碑前の土手だ。谷中湖と渡良瀬カントリーゴルフ場の間になる。土手前の大池から沸き立つ霧を見ることができる。アシ原の彼方に筑波山と日の出も望める。日の出の1時間前に到着したい。川霧の朝は土手に写真愛好家の車が十数台止まっているので目印になる。

 このアシ原は、足尾鉱毒事件の歴史を伝える旧谷中村の跡地である。川霧の美しさが自然環境保護の大切さを訴えているかのようで、心を打たれる。

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