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【1999年1月 渡良瀬有情】

雪の大地

撮影・文 堀内洋助


 雪の日に、渡良瀬川源流の足尾ダムで朝を迎える。道路、砂防ダムなど人工的な建設物は、白い世界に覆われ、美しい自然の風景が蘇っていた。冬枯れのヤシャブシの木に、雪の花が咲く。松木川に十数羽のマガモが群れる。

 自然のドラマに感動していると、足尾製錬所付近から黒煙が高々と上がった。しだいに煙が、谷の中の市街地を雲のように覆った。まるで「公害の原点」足尾の亜硫酸ガスの煙害を彷彿させる異様な光景であった。煙が私のいる足尾ダムまで届き、プラスチックを燃やしたような悪臭がした。産業廃棄物を燃やす煙だという。ダイオキシン対策は十分だろうか。足尾の自然の中で見た、悲しい出来事だった。

 緑化工事中の山の斜面にレンズを向けると、ニホンジカの死体が見えた。急峻な崖と雪で近付けないが、打たれたばかりのようだ。数時間前ハンターに出会っている。12月1日から1月31日まで狩猟期間。栃木県内で毎年約1800頭が捕獲されている。半数が高山植物や植林した樹木の樹皮がシカに食い荒される被害を防ぐための駆除の対象とされる。

 シカの死体にカラス13羽、トビ7羽、ノスリ2羽が集まった。カラスが群がると、トビとノスリは追い払われる。上空でノスリは真っ白い羽をホバリングして停止飛翔。そこにトビがニアミスを繰り返す。大雪の日の獲物に鳥たちも必死だ。食物連鎖による生態系のドラマにシャッターを押し続けた。 雪の大地は魅惑的な被写体に出会うことが多い。自然が激しく問い掛けてくる。厳しい寒さが心と眼を研ぎ澄ますからだろうか。

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