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【1999年4月 渡良瀬有情】

春の遊水地

撮影・文 堀内洋助


 春風が渡良瀬遊水地の湿原に吹き、のどかで暖かな季節を迎えた。土手に広がるセイヨウカラシナの菜の花やレンゲソウの群落は春の風物詩。

 繁殖期に入った野鳥は、求愛の声を大地に響かせて賑やかだ。「ケーン、ケーン」とキジが縄張り宣言。「ピィピィ、チュリチュリ、ピーチク」と複雑な声でヒバリがさえずる。今年も東南アジアから渡って来たワシタカ類のサシバが「ピックィー、ピックィー」と森の周辺を鳴きながら飛ぶ。子育て中のハシボソガラスが群れでサシバを追い払う。春の野に自然のドラマが戻ってきた。

 一方で“招かれざる客”カワウの数百羽のねぐらが広大な遊水地の中央の渡良瀬川と巴波(うずま)川の合流点付近に昨年から作られた。ヤナギの木はフンで真っ白に覆われ、ここだけ若葉が見られなく立ち枯れている。1996年12月に東京・中央区の浜離宮を追われたカワウ1万羽の一部だろうか。「フン害」で人間の生活圏から追い出され、ここに安住の地を見つけたのか。自然が豊かな遊水地だが、カワウは1日に魚3匹を食べるというから、漁師やつり人にとっては厄介者なのだ。

 ところで、カワウの木の北側のヨシは、3月24日のヨシ焼きで燃やされず大部分残ってしまった。藤岡町でヨシ刈りをする農家は10軒に減少。ヨシ焼きはヨシの成長を促すが、「ヨシ農家のために働くのもばかばかしい」とボランティアが参加しなかったという。「あと数年でヨシ焼きが終わってしまうかもしれない」と、住民の心配の声も聞かれる。

 自然や人間の営みは、時代とともに風景を変えていく。それゆえ春の遊水地はいつも違った自然のドラマの一瞬を与えてくれるから、興味が尽きない。

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