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【1999年8月 渡良瀬有情】

夏の日々

撮影・文 堀内洋助


 連日の真夏日が続く渡良瀬遊水地。朝と夕方に撮影時間を限定し、猛暑の昼間は、アシ原にポツンと立つ“一本エノキ”の木陰に車を止めて仮眠することが多い。時々エノキの実が、風に落とされて車の天井に響き、その音で起こされることがある。耳障りだが、風が吹くと心地好いので、目覚し時計と思っている。

 ある日、木陰で遅い昼食を食べ始めた時、エノキのこずえでチョウトンボが、6匹ひらひらと飛んだ。同じ付近をチョウのように舞い続けながら、アシの葉で羽を休めては飛び上がる。最近各地で姿を見掛けなくなった珍しいトンボだが、遊水地では“夏の風物詩”だ。

 チョウトンボは平地の池や沼で育ち、7月から9月まで見られる。体長は約35ミリ。はねの色は、黒い青紫やブロンズの光沢で美しい。ひらひらとチョウのように飛ぶので人気がある。関東地方では、霞ヶ浦や宍塚大池(土浦市)も多く生息するが、局地的。以前は、各地の池で見られたが、農薬の利用などで水辺が汚染され、姿を消してしまった。

 いま、渡良瀬遊水地をエコミュ−ジアム(自然・歴史博物館)にする計画を進める、市民団体「渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会」と「谷中村の遺跡を守る会」と「水土緑を考える会」は、兵庫県豊岡市のコウノトリ保護増殖センタ−の人工繁殖で誕生したコウノトリを遊水地で野生化させる試みを検討している。

 夢の実現には、農薬を使わない農業などの環境整備や地域住民の理解と協力や特別天然記念物という問題など、多くの課題がある。豊岡市のコウノトリは現在62羽。100羽を越える4−5年後、自然に帰そうという。

 自然の豊かな遊水地でコウノトリが舞う姿を、見て見たいと思う。それには今以上の自然環境が求められる。21世紀の壮大なロマンを求めて、コウノトリから人間社会に突き付けられた課題は重い。

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