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【1999年10月 渡良瀬有情】

源流を歩く

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬川源流の足尾町は、国の特別天然記念物に指定されたコウシンソウとニホンカモシカ、天然記念物のイヌワシが生息する。冬季はオジロワシとオオワシが中禅寺湖や足尾に飛来し、ニホンジカの死体を食べているという。国の天然記念物が5種も見られる足尾の山は、実に魅力的である。

 コウシンソウは庚申山の岩壁で6月中旬に咲くタヌキモ科の食中植物。世界でもこの付近にしか生育しない“幻の花”である。同山麓のお山巡りコースに自生するが、大きな群生地は数ヶ所だけになり絶滅が心配される。ログハウスの町営庚申山荘(素泊まりのみ)から1時間。紅葉も素晴らしい。

 ニホンカモシカは煙害で荒涼とした岩山を好み、標高千メートル以上の山岳地帯という条件に適し、日本有数の生息密度である。また緑化工事で草や木が植栽され、えさの環境も良かったのだろう。龍蔵寺周辺の民家にも現れ、庭の木の葉を食べている。わたらせ渓谷鉄道の間藤駅は、カモシカの見える駅で有名。足尾ダムから数百メートル下流の左岸の岩山も道路から見られる。カモシカは一定のテリトリーの中で生息するので、待ち続けていると移動して来る。

 食物連鎖の頂点に立つイヌワシが近年目撃されるようになり、足尾の山に緑が蘇った証しとなった。97年春、栃木県野生動物研究会(矢沢高史会長)が初めて営巣中の親子を確認。イヌワシは草原や低木疎林の上空を飛びながらえさを探すので、足尾の山は良い環境なのだ。緑化工事でノウサギ、テン、ヤマドリ、ヘビなどが増え、豊かな自然に戻りつつある。今頃から繁殖期が始まり、松木沢や安蘇沢の上空を、2羽で並んで飛ぶ求愛飛翔が見られる事もある。

 日本の公害の原点といわれる渡良瀬川源流の足尾を、自然の営みから見つめると、いつも新たな発見と感動がある。地球環境を守ることの大切さを足尾の山は訴えているようだ。

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