東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > 渡良瀬有情 > 2000年度 > 2000年4月

ここから本文

【2000年4月 渡良瀬有情】

サクラソウ自生地

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬遊水地はモノト−ンから原色の世界に移り変わって行く。ヨシ焼きの跡からヨシの新芽が顔を出し、広大な湿地を新緑に染め始めた。成長の早さは驚くほどだ。一週間も訪れないでいると、風景が一変する。同時に土手にはセイヨウカラシナの黄色い群落とヒレアザミの赤い花が現れて春爛漫。

 行く春を惜しむ今月下旬、第二調節池でサクラソウが開花する。関東地方に残された数少ない自生地だ。サクラソウは環境庁の植物版レッドリストで絶滅危惧U類に指定された貴重な植物。開発による湿地の減少で絶滅が心配されている。

 昨年春、遊水地の植物を15年間調査している栃木県植物研究会の大和田真澄さんとサクラソウの自生地を訪れた。膝下まで伸びたヨシとオギの群落の一坪程の場所に、ピンクの花が咲き誇っていた。隣接して絶滅危惧U類のチョウジソウの大群落があり、まるで秘密の花園に迷い込んだようだった。

 カメラを向けると小さなハチが花のみつを吸っていた。トラマルハナバチといい、大和田さんによると、サクラソウはこのハチで受粉しているという。ハチは見渡す限りのアシの中から、この花をよく見つけたと感心する。サクラソウはこのハチがいないと花が咲かないのだ。

 サクラソウは、5月中旬にはヨシの成長で姿を隠してしまう。人の目に触れる事も無く、散って行くので盗掘の被害から免れて来た。しかし、第二ダム建設が計画されている。全国的に開発で姿を消してしまったサクラソウだが、遊水地の自生地は生き延びてほしいと思う。

バックナンバー