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【2000年6月 渡良瀬有情】

野鳥賛歌

撮影・文 堀内洋助


 関東地方は今月9日、強い風と雨が吹き荒れる中で梅雨入りした。梅雨明けは来月20日ごろという。約1カ月半、前線が停滞し梅雨空が続く。

 この時期の渡良瀬遊水地は、繁殖期を迎えた野鳥が忙しそうに飛び回っている。背丈を越す程に伸びたアシの上で、オオヨシキリとコヨシキリが求愛と縄張り宣言のラブソング。広大なアシ原に「カッコ−、カッコ−」の心地いい声が響く。セッカ、ヨシゴイ、カルガモが、飛ぶのも心和む風景だ。

 湿地帯の中に、旧谷中村の屋敷林や小さな森が点在する。この森の一角に、カワセミが営巣した。小魚をくわえて巣穴に入る、美しいコバルトブル−の姿に出合っている時、私の背後から何かの視線を感じた。周囲を見渡すが、木々と草しかない。だが、“気”の気配は続いている。

 立ち上がって、じっくり見渡す。なんと、フクロウ類のトラフズクが3メートル横の目の高さの枝に止まって、私を見つめていた。気はトラフズクの視線だった。じっと草むらで身を潜めていると、人間の野生感覚が鋭くなるのだろうか。周囲を歩いても、飛び立つ素振りは見せず、私の行く方向に顔を向け、目を見開いてにらむ。まるで森の精のような風格であった。

 しばらく前から、モズが「ケタケタケタ−」と甲高い声で鳴きだした理由は、縄張りにトラフズクが入ったためなのか。探索すると、数メートル横のスイカズラの枝にお椀形の巣があり、ひな6羽が誕生していた。スイカズラの白い花の甘い香りが、巣の周りに漂っていた。

 元居た場所に戻ると、もうトラフズクはいなかった。遊水地の森は、野鳥に素晴らしい生息環境を提供していると思った。アシ原の豊かな自然は、野鳥にとっても貴重なオアシスなのだ。

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