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【2000年9月 渡良瀬有情】

ミズアオイ群生

撮影・文 堀内洋助


 初秋を告げる水草のミズアオイが、妖艶な青紫色の花を咲かせ、渡良瀬遊水地に群生している。全国的な湿地の減少と共に姿を消したミズアオイは絶滅危惧・類に指定され、栃木県では遊水地だけに自生する貴重な植物。

 群生する場所は、谷中湖北ブロックの子供広場ゾ−ン横の護岸で、建設省が設置した「ケナフを利用した谷中湖の水質浄化実験水路」。今年6月、藤岡小学校の児童が遊水地のミズアオイ180株の苗を植えて、8月中旬から咲き始めた。花は今月が最盛期。多数のイトトンボが群がり、ミツバチが花の密を吸いに訪れている。10月には、藤岡と部屋小学校の児童が種を採取する予定だ。1年草なので継続的に栽培するには毎年種を取り、来春に発芽させ苗に育てる事が必要という。

 遊水地の植物を調査する栃木県植物研究会員の大和田真澄さんは、「ミズアオイは工事跡で土壌が攪乱された後の湿地に見られるが、消長が激しく翌年にはほとんど消滅する事が多い」と話す。第二調節池に建設省が設けた「湿地再生試験地」では、アシ原を掘削した跡に、今秋ミズアオイが姿を見せた。長年眠っていた種がある日突然花を咲かせる。遊水地のミズアオイは不思議な植物だ。大和田さんは、「昔、田んぼだった場所ではないか」と推測する。日本屈指の大湿地帯は土壌に遊水地の歴史を語り続けているようだ。

 環境庁の「植物版レッドリスト」による、絶滅が危惧されている植物43種を含む約670種が遊水地で確認されている。その中で一番心に残り美しい植物はミズアオイと思う。藤岡町の花にとの声もある。土壌の掘削した跡地に咲いたり、湿地を減少させた谷中湖の護岸に人工的に群生するミズアオイだが、21世紀には普通に見られる光景でありたいと思う。

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