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【2000年10月 渡良瀬有情】

足尾異彩

撮影・文 堀内洋助


 秋の足尾を訪ねて、渡良瀬川を北上する。夜明け前、渡良瀬川源流の碑が建つ足尾ダムの展望台に到着。満天の星空だった。荒涼とした山肌の上に輝くオリオン座と天の川に魅了される。足尾の星の美しさは、日本有数に違いない。川の水音を聞きながら、ベンチに寝転び、星降る夜明けを迎える。実に、至福の時である。

 「フィ−、フィ−」とニホンジカの甲高い鳴き声が山にこだました。雌を呼ぶ雄の声なのだろう。秋は発情期なのだ。以前、この展望台の前で交尾を見た。慌てて500ミリ望遠レンズを出したが、すでに遅かった事を思い出す。 安蘇沢の林道を通り、松木沢左岸の標高1400メートルの山に登る。ここは煙害がひどく、草木も生存しないはげ山だったという。その面影は今はない。昭和32年からの本格的な緑化工事で、豊かな森が蘇っていた。ヤシャブシ、クロマツ、アキグミ、ニセアカシアが40数年間で見事に成育している。

 この山の斜面にミズナラの老木が数本あった。松木沢右岸の土壌が全く流出した岩山や備前楯山や製錬所を見下ろしている。長年、植林作業に従事している赤間造林土木(有)代表の赤間光三郎さん(72)は「煙害をまぬがれて生き残った木」という。ミズナラは、足尾の原生林の主役を成していたのだ。足尾の山の辛酸な歴史を見続けて来たこの木に、私は深い哀愁を感じた。

 今月29日午前10時から午後3時まで、「足尾の緑化事業の軌跡を訪ねて」のフィ−ルドワ−クが、わたらせ川協会と足尾に緑を育てる会主催で行われる。多くの人にこの現場を見てもらいたいと思う。足尾ダム駐車場集合で参加費500円。赤間光三郎さんの案内で久蔵沢と安蘇沢を約5キロ歩く。申し込みは25日までに。連絡先電話FAX0283・93・2180(神山英昭さん)。

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