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【2002年4月 渡良瀬有情】

ヨシ焼き

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬遊水地で先月17日、春を告げる恒例のヨシ焼きが行われた。いいヨシを育てるためと、害虫駆除が目的で、よしず生産業者らで組織する渡良瀬遊水地利用組合連合会(田中逸郎会長)や地元消防団など約600人が参加した。

 作業開始の午前8時30分、各所で火が放たれた。強い西風が一気に赤い炎を走らせ、同時に黒煙が噴き上がる。強風のためか、小さな竜巻が次々に発生。竜巻が炎の中に入り、火柱が高々と上がる珍しい光景も。ヨシ焼きを撮影して11年になるが、一番見事な光景だった。暖かな気候が続き、雨不足でヨシが乾燥していたことと、強風のせいだろう。

 見物人も空前の人出を記録し、大勢の人たちがカメラを向けていた。その理由は、今年から灰が落ちる地域からの苦情に対応するため、周辺自治体が、各家庭にPR文章で広報したためという。地元の写真作家・中田友一さんによると「2月末発売の二つのカメラ誌にヨシ焼きの案内が掲載された」ことも一役買ったようだ。

 一夜明けの遊水地を訪れた。昨日の騒然とした時間がうそのように、いつもの静けさに戻っていた。薄明の中、黒い大地を見回すと、炎上して倒れたヤナギが、いまだ朱色の炎を出していた。一晩中燃えていたのだ。風が吹くと炎が大きくなり、火花が飛んだ。悲しみの光景だった。

 燃えたヨシの黒い灰をほうきで集めて袋に入れている農家の老人に出会った。野菜畑にまくという。昔は、ほとんどの農家が取りに来ていたが、今は化学肥料があり、やらなくなった。「おいしい野菜ができるのになあ」と残念そうだった。

 植物の成長は早い。土手にはセイヨウカラシナの黄色い群落。黒く焼けた大地には新芽がいぶき緑が広がっていく。今月中旬、春らんまんのいい季節が到来する。

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