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【2002年9月 渡良瀬有情】

第二貯水池の中止

撮影・文 堀内洋助


 国土交通省関東地方整備局は先月28日、渡良瀬遊水地に治水と利水を目的とした第二貯水池(2・6平方キロメートル)の建設計画の中止を決定した。

 同月6日、6年ぶりに開かれた渡良瀬遊水池総合開発(期)事業審議委員会は、利水予定者から事業参画の意思表示がないなどの理由で「中止が妥当」と最終答申をしていた。

 この決定を知り、同遊水地の第二調整池を訪れた。到着したのは日の出の直前だった。朱色の光線が川霧の中を走る美しい夜明けに遭遇した。無数のツバメが目の前を飛び回る。目の前に広がる日本屈指のアシ原の豊かな自然環境が守られたと思うと実に嬉しかった。

 「生態系が破壊される」と、一都五県の住民で作る「渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会」(高松健比古・代表世話人)は、12年にわたり国土交通省と対話。動植物や水質など生態系の基礎調査とシンポジウムの開催で、第二貯水池の建設計画の中止を訴えてきた。このねばり強い運動が、国土交通省の英断を生んだのだろう。

 同遊水地を撮影して12年になる。豊かな自然に出合う楽しみで、出勤前や休みの日にも訪れている。家族とのレジャーも遊水地が多かった。

 特に、第二調節池は絶滅危惧種の貴重な植物の群落が多く、ワシタカ類の生息地。平成10年2月、関東地方に国の天然記念物マガンの大群が約30年ぶりに訪れたのはここだった。また、風景ではこれから晩秋の朝、アシ原の彼方に見る富士山や幻想的な川霧がいい。

 ここは人の心をいやすオアシスなのだといつも思う。悲しみの風景を撮らずにすんで安堵した。

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