東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > 渡良瀬有情 > 2003年度 > 2003年9月

ここから本文

【2003年9月 渡良瀬有情】

秋めく山野

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬川流域に8月下旬、近づいた秋の姿を訪ね歩いた。今年は冷夏に見舞われたが、訪れた数日間は太平洋高気圧が関東地方を覆い、最高気温が挙xを超えて今年一番の暑さとなった。

 避暑を兼ねて、標高1400の赤城山・鳥居峠に上った。ここは眼下に渡良瀬川を望み、運がいいと都心の超高層ビル群が遠望できるビューポイント。展望台の前まで車で行くことができる。

 夜明けをこの峠で迎えた。気温18度と心地いい肌寒さ。満天の星が消えていき、足尾山塊から昇る日の出と朝焼けは美しかった。さわやかに澄んだ渡良瀬の空に、代表的な秋の雲とされるうろこ雲やさば雲が次々に現れ、刻々と形を変貌してくれた。また、夏を山で過ごすアキアカネが赤みを増し、群れて飛んでいた。目的の渡良瀬川の姿は霞の中で見えなかったのが残念だった。しかし、地上の夏と空の秋が同居する思いがけない光景は魅力的だった。

 この鳥居峠から谷の底にのびる赤城山鋼索鉄道のケーブルカー跡があった。赤城山の観光開発のため、1957(昭和32)年7月に黒保根村の利平茶屋と鳥居峠間1033が開通。東武鉄道で浅草から直結ルートのため人気があったという。しかし、赤城道路の開通で乗客が減少し、67年11月に廃止され、わずか10年の短い命だった。当時の駅舎はいま、レストハウスになり、資料写真や鉄道の部品なども展示され、その名残をとどめていた。

 赤城山を下りて、渡良瀬川に向かった。夏の空気がとても暑く感じた。山にもう少し滞在すればよかったと悔やまれた。少しは涼しさを感じるアシ原の渡良瀬遊水地で夕焼けを狙うことにした。

 いつもの池を訪れるとシラサギが群れていた。繁殖を終え、東南アジアに南下するアマサギやチュウサギが、晩夏から初秋にかけて、ここに集結してねぐらを作る。その数はダイサギやコサギも加わり数百羽になる。県内随一のツバメのねぐらとともに秋めく遊水地の風物詩だ。夕焼けは期待はずれだったが、薄暮の中で次々にねぐら入りするシラサギの美しい白い姿が実に印象的だった。

 周辺の休耕田に、秋の渡りのシギ・チドリ類やショウドウツバメ数千羽の群れが飛来していた。秋めく渡良瀬の自然の息吹に、いつも感動する。

バックナンバー